人事にびびる? 自民党総裁選「振り子」動かず 

2020年9月15日 06時00分
 安倍政治の継承を掲げた菅義偉官房長官が圧勝した自民党総裁選。かつて自民党は、時の首相・総裁の路線が行き詰まると、違う路線を掲げる後継者を選んで世論の支持をつなぎとめることが再三あったが、今回はそうした「振り子の原理」は働かなかった。(井上峻輔)
 

◆2007年はタカ派からハト派に

 保守系の次はリベラル系、金権イメージの後は清廉な人物…。自民党は長い歴史の中で、振り子が左右に振れるように総裁のタイプを変えてきた。「疑似政権交代」とも呼ばれ、党のイメージを一新させて長期政権の要因にもなった。
 1960年には、日米安全保障条約を改定した岸信介氏から、所得倍増計画を掲げた池田勇人氏に転換。74年には田中角栄氏が金脈問題で退陣後、クリーンなイメージの三木武夫氏に白羽の矢が立った。
 2001年の総裁選は、密室で選ばれたと批判があった森喜朗氏の後任に「自民党をぶっ壊す」と掲げた小泉純一郎氏が当選。保守色が強かった第1次安倍政権の後には、「ハト派」のイメージがあった福田康夫氏が総裁になった。

◆「いろんな意見があるのに」

 今回の総裁選でも、ハト派とされる派閥「宏池会」の領袖である岸田文雄政調会長や、安倍政権と距離を取ってきた石破茂元幹事長が選ばれていれば、振り子が動いたと言えた。
 結果は、主要派閥が菅氏を支持。岸田陣営幹部は「みんな人事にびびっている。いろんな意見があってこそ自民党の底力なのに」と党内の多様性が失われつつあることを嘆く。
 今回は党員投票が省略され過去に振り子を動かした地方票の影響も限られた。1年後の総裁選は、緊急事態がなければ正規の方式で行われる。党員票が路線転換を促す可能性もある。
 「振り子」や「疑似政権交代」は、衆院選で政権交代が起こる可能性が低い時代に生まれた言葉。次の総裁選前に解散・総選挙が行われれば、安倍路線の継続を掲げる菅政権と、転換を目指す野党勢力が政権をかけて対決する。

PR情報

政治の最新ニュース

記事一覧