菅氏の描く社会像は… 「自助」優先、弱者置き去りの懸念

2020年9月15日 06時00分
 自民党の新総裁に菅義偉官房長官が選出された。総裁選への立候補を表明してから10日余り。安倍晋三首相の路線継承と前進を強調し続けたが、菅氏自身はどんな社会像を描き、どのような政治手法で政権を運営していく考えなのか。この間の発言から探った。(村上一樹、清水俊介)

◆新政策の発信は乏しく

 「まずは、自分でできることは自分でやってみる。そして、地域や家族で助け合う。その上で、政府がセーフティーネットで守る」
 菅氏は14日、新総裁に選出された直後のあいさつで、目指す社会像として重ねて「自助・共助・公助」を掲げ、こう語った。
 だが、菅氏はこれ以上の説明をしていない。自民党が野党時代の2010年に策定した綱領に「自助自立する個人を尊重」「共助・公助する仕組みを充実」と明記されているが、関係があるのかも分からない。総裁選で語った具体的な政策は、訪日外国人観光客の増加やふるさと納税の創設、携帯電話料金の引き下げに向けた取り組みなど、過去の実績が大半。新たな政策の発信は乏しく、自らの政治理念を披露する場面も見られなかった。
 全体像が分かりにくい中で、見え隠れしたのは、競争原理が強く働く新自由主義の考えだ。菅氏は共助、公助より先に「自助」を挙げ、日銀の金融緩和策が地方銀行の経営を厳しくしたとの指摘には「地銀の数が多すぎる」と言及した。
 自助の偏重は、弱者の置き去りにつながるのではないか―。野党は批判や警戒を強め、立憲民主党の枝野幸男代表は「政治家が自助と言ってはいけない。責任放棄だ。人生には、自助や共助でどうにもならない時がある。政治の役割は公助だ」と指摘。共産党の志位和夫委員長も「あからさまな自己責任論だ。人々が支え合い、連帯を大切にする社会に」と主張する。

記者会見する自民党の菅義偉新総裁

◆官邸主導「忖度」助長も

 「方針に従ってもらえない場合は異動してもらう」
 菅氏は13日のフジテレビ番組で、政策決定を巡り、反対した官僚を交代させる考えを強調。中央省庁の幹部人事を決める内閣人事局の運用も、変える必要は「ない」と明言し、官邸主導の政権運営に意欲をにじませた。
 内閣人事局は安倍政権が14年に創設した。首相肝いりの政策の推進力は強まったが、官邸が人事権を握ることで、意向に逆らいづらい風潮をつくりだしたとの指摘もある。
 官僚の「忖度」がはびこり、安倍首相の妻昭恵氏とかかわりがあった森友学園への国有地売却問題を巡る公文書改ざんや、関与を苦にした職員の自殺など深刻な事態ももたらした。
 菅氏は官房長官としての7年8カ月を振り返り「政権の中枢にいて取り組んできた。首相として進めていく準備はある」と胸を張る。同時に「役所の縦割り、既得権益、あしき前例主義を打破する」と省庁批判を繰り返してきたが、権力の集中には「忖度」の風潮を助長する危険性も付きまとう。

PR情報

政治の最新ニュース

記事一覧