熊谷6人殺害、無期懲役確定へ 遺族の加藤さん思い「時間で傷 薄れない」

2020年9月16日 07時14分

家族の思い出が詰まったアルバムを見つめる加藤さん=熊谷市で

 熊谷市で二〇一五年九月十四〜十六日、男女六人が殺害された事件は発生から五年となった。妻子三人を失った遺族男性の加藤さん(47)は、変わらない悲しみや苦しみ、司法制度への憤りなど複雑な思いを抱えながらも、「犯罪で苦しむ人がなくなる世の中を」と願っている。(森雅貴)
 五年前の九月十六日。加藤さんが勤務先から帰宅すると、自宅周辺には警察の規制線が張られていた。室内からは妻美和子さん(41)、長女美咲さん(10)、次女春花さん(7つ)=年齢はいずれも当時=の遺体が見つかったが、状況がつかめず、頭が真っ白になった。それから数日の記憶はない。
 家族でよく出かけた。美和子さんとは「娘たちのウエディングドレス姿を見たい」と語り合った。事件後は家族旅行をした場所を訪ねたり、家族の夢だった東京ディズニーランドを三人の写真とともに訪れた。
 妻や娘は最後に何か言っていたか、どんな様子だったのか−。真実を知ろうと被害者参加制度を利用し、一審から全ての公判に参加。さいたま地裁は一八年三月、強盗殺人罪などに問われたペルー人、ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(35)に死刑判決を言い渡し、「一つの区切りがついた」と受け止めた。
 ただ、時間がたつほど「以前の生活に戻れたら」との思いにかられた。さらに控訴審で被告は娘の存在を覚えていないとし、謝る姿勢も見せず、怒りだけが募った。二審東京高裁は被告の心神耗弱を認めて一審判決を破棄。最高裁は今月九日付で被告の上告棄却を決定し、無期懲役とした二審判決が確定する見通しだ。
 何度も「生きてる意味はない」と考えた加藤さん。同じ境遇にある他の事件の被害者遺族らと交流し、少し気持ちは落ち着いたが、仕事に復帰するまでには三年かかった。「なぜ遺族がこんなに苦しまないといけないのか。裁判と法律は何のためにあるのか」。国や行政には、被害者遺族へのさらなる精神的、金銭的な支援が必要だと訴える。
 事件に関する県警の情報提供が不十分だったとして、県を相手取った民事裁判は続く。加藤さんは「時間がたてば傷は薄れていくというが、そんなことはない。このような気持ちになる人がなくなるよう、社会は変わってほしい」と強く願う。

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