安倍政権と暮らし 検証 新内閣、引き継ぐ課題は 四つのテーマ、専門家と考える

2020年9月16日 07時43分
 きょう16日、臨時国会が召集され、安倍晋三首相の後継として菅義偉(すがよしひで)首相が誕生、新内閣が発足する。2012年12月から、歴代最長となる7年8カ月にわたって続いた第2次安倍政権は、私たちの暮らしをどう変えたのか。「働く」「家計」「介護」「子育て」の四つのテーマで専門家と考える。

【働く】「改革」に着手、一歩前進
リクルートワークス研究所主任研究員・萩原牧子さん

 長時間労働や正規・非正規の不合理な処遇格差といった問題に切り込む「働き方改革」に手を付けたのは大きい。いずれも課題だと分かっていながら、これまで未着手だったものだ。
 柱の一つ、長時間労働を巡っては、原則として時間外労働時間を月四十五時間までとする上限規制を導入。その結果、多くの企業が労働時間の削減に動いた。政府が二〇一七年に策定した働き方改革実行計画の中で、副業やテレワークといった多様で柔軟な働き方の重要性を示したことも意義がある。そうした準備がコロナ禍で広がったテレワークに結び付いた面はある。
 四月からは、非正規で働く人の待遇改善を進める制度「同一労働同一賃金」が始まった。非正規従業員の賃金を正規職員に近づけることで、消費を底上げする狙いだった。しかし、現状はむしろ、今ある賃金格差を合理的に説明できるよう、正規と非正規の仕事内容の違いを明確化する動きにつながってしまっている。本来の目的を果たすためには、次の政権が手を打つ必要がある。

【家計】所得と資産、二極化進む
中京大客員教授・エコノミスト 内田俊宏さん

 アベノミクス初期の日銀の金融政策で円安株高が進んだ。その恩恵を享受できたかによって格差が広がり、所得の面でも資産の面でも二極化が進んだ。
 例えばトヨタ自動車など大手メーカーは輸出増の効果が大きく、関連企業に勤める人には賃上げが波及。円安で訪日外国人も増え、観光関連産業の従事者にも恩恵があった。富裕層など株式で資産運用する投資家には効果が大きかった。
 だが、円安とは無縁の内需型企業で働いている人や、預貯金だけの運用で、株式投資をしていない人に加え、年金生活者や低所得者などお金にゆとりのない人にとっては、アベノミクスの恩恵は少なかった。賃金が伸び悩み、二度の消費税増税と、社会保険料などの引き上げで家計への負担増が重くのしかかった。
 一方、ネットワーク社会の進展で、ネット通販や個人間取引などを活用し、ポイントをためたり、安く物を手に入れたりする手段も増えている。さまざまな工夫で支出を抑え、ゆとりができれば資産運用を考えることも大切だ。

【介護】「自助」強調、広がる格差
淑徳大教授・結城康博さん

 安倍政権は「介護離職ゼロ」を掲げてきた。だが、今も年に約十万人が介護離職し、改善されていない。介護が必要な人が介護保険で十分なサービスを受けられるようにするのではなく、介護が必要のない状態を目指す「自立支援」に力を入れ、結果的に家族に負担がかかり続けている。
 二〇一五年に特別養護老人ホームの入所基準を要介護3以上に。要支援者向けの訪問・通所介護は保険給付から外し市区町村の事業に移した。高齢化で財政が厳しく、国は介護サービスを使わせないようにしているとみられても仕方ない。
 人手不足も依然深刻。特にヘルパーは圧倒的に不足。介護報酬を引き上げるなど処遇改善を行った点は評価できるが、他の職種との賃金差は大きい。存続できない事業所も多く、地域の介護の担い手は危機的だ。
 「自助」や「地域共生社会」などの言葉を強調しながら、本来国が担う責任を放棄している。家庭の財力、自治体の財政、住んでいる場所によって介護の格差はますます広がるだろう。

【子育て】子の視点で政策見直せ
日本総合研究所上席主任研究員・池本美香さん

 保育施設が増え、希望しても保育所などに入れない待機児童数は四月時点で約一万二千人と、ほぼ半減した。昨年十月からは、一日最大十一時間までを対象に幼児教育・保育の無償化も始まった。ただ、長時間保育のニーズが高まったことで現場の負担は増大。子どもを預かることができる時間を短くするなど、ゆとりを持って保育ができる政策を打ち出せず、保育士不足はさらに深刻に。施設で子どもが大けがなどをする事故も増加傾向にあり、保育の質への不安が強まっている。
 午後六時半以降も利用できる放課後児童クラブも増えた。子どもを長く預けて働きやすくなり、女性の就業率は八割に迫る。しかし、保育は保護者の就労支援のためだけではなく、子どもが安心して楽しく過ごせることが大事。そうでなければ「産みたい」「育てたい」と思えず、昨年の出生率は一・三六と四年連続で低下した。子どもオンブズマンといった独立機関を設けて保育の現状を調べ、子どもにとってどうかの視点から政策を見直すべきだ。

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