表彰台に上がった二人の陸上選手が黒い手袋をはめて、こぶしを…

2020年9月16日 08時02分
 表彰台に上がった二人の陸上選手が黒い手袋をはめて、こぶしを突き上げている。有名な写真を覚えている人もいるか。一九六八年十月、メキシコ五輪の男子200メートル。優勝はトミー・スミス選手で三位がジョン・カーロス選手。いずれも米国の選手で、そしてアフリカ系である▼その年は黒人差別撤廃を求める公民権運動が全米で高まりを見せ、四月には公民権運動の指導者だったキング牧師が暗殺されている。五輪の表彰台で二人がつけた黒い手袋には差別に対する抗議の意味がこめられていた▼半世紀以上が過ぎた。黒人差別はなくなっていない。そして、その女性選手は手袋ではなく、黒いマスクを着用する方法を選んだ。それぞれのマスクには警官の行き過ぎた行為などによって命を奪われた黒人犠牲者の名が記されている。テニスの全米オープン女子シングルスで二度目の優勝をした大坂なおみ選手である▼差別に目を向けて議論してというマスクによる問題提起である。用意した七枚のマスクすべてを見せるには決勝戦に進むしかない。そして成し遂げた▼マスクだけではない。決勝戦の第1セットを1−6で落とした。アザレンカにまるで歯が立たない。そこから形勢をひっくり返した▼どんな困難にも決してあきらめない。不屈のプレーそのものが差別の消えぬ世界に向けた大坂の決意でありメッセージなのだろう。

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