UAEとバーレーンがイスラエルと国交正常化 米で署名式「中東の新しい夜明け」

2020年9月16日 10時35分
 

15日、米ホワイトハウスで署名式に臨むトランプ大統領(右から2人目)とイスラエルのネタニヤフ首相(同3人目)、アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンの外相=ホワイトハウス提供、ゲッティ・共同

 【ワシントン=金杉貴雄】イスラエルのネタニヤフ首相とアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンの中東2カ国の各外相は15日、米ホワイトハウスでトランプ大統領の仲介のもと国交正常化の合意文書に署名した。親イスラエル一辺倒で、敵対するイランの包囲網構築を目指すトランプ流外交が、アラブ諸国を取り込む結果となった。

◆トランプ氏、大統領選の弾みに

 パレスチナ問題で対立するイスラエルとアラブ諸国が国交を結ぶのは、1994年のヨルダン以来26年ぶり。トランプ氏は11月の大統領選に向け、「歴史的成果」として強調したい考えだ。
 署名式でトランプ氏は「分断と対立を繰り返してきた中東の新しい夜明けを迎えた」と意義を力説。ネタニヤフ氏もトランプ氏の仲介に謝意を示し、「アラブとイスラエルの対立を終結させられる」と語った。
 トランプ氏は政権発足以来、イスラエルを支持するキリスト教右派「福音派」へのアピールのため一貫して親イスラエル政策を推進するとともに、イランには核合意から離脱し制裁を強化するなど厳しい対応をとってきた。UAEなどアラブ諸国はイランの影響力拡大を懸念しており、イスラエルとの関係改善を働き掛けるトランプ氏の仲介に応じることになった。
 トランプ氏は署名式前、記者団にイスラエルとの国交正常化について「アラブ諸国のうち少なくとも5、6カ国と話し合っている。多くの国が署名したいと考えている」と強調した。 

◆解説 「裏口使った」歴史的合意


 今回のイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンの国交正常化は、イスラエルとアラブ諸国の国交樹立にはパレスチナ問題の解決が前提との従来の常識を覆す、全く新しい手法で実現させた点で「歴史的な合意」と言える。
 イスラエルは1979年にエジプト、94年にヨルダンと国交を樹立。両国はイスラエルと国境を接し、いずれもイスラエルによる占領地返還が和平合意の条件だった。今回はイスラエルがヨルダン川西岸の併合一時凍結を表明したものの、占領地返還などの交換条件がなかった点も異例だ。
 仲介役の歴代の米政権は、パレスチナとの和平合意を最優先に交渉をしてきたが、26年間、イスラエルとアラブ諸国が新たな和平を結ぶことはなかった。今回、トランプ米大統領が署名式に先立ち「裏口を使った」と述べたように、従来と異なる手法が国交樹立につながったと言える。
 アハラム政治戦略研究センター(エジプト)のアフマド・サイイド・アフマド氏は「パレスチナ問題の解決を前提としてきたこれまでの常識を根底から覆した点が大きい」と説明する。
 政府間で合意には至ったものの、アラブ諸国の市民レベルに根付くイスラエル不信は強く、パレスチナ問題も未解決だ。今後、民間レベルで交流が進むことになるが、こうした感情をどう乗り越えるかも課題となる。(カイロ・蜘手美鶴)

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