「言葉は民衆のもの」 不屈の言語学者・斎藤秀一に光 国際共通語通じ非戦訴え

2020年9月16日 13時55分

斎藤秀一

◆何度も特高の標的に それでも信念貫く

 日中戦争が泥沼化していた約80年前、国際共通語エスペラントを通じて非戦と世界平和を訴え、特別高等警察(特高)による弾圧の標的となった山形県出身の僧侶・言語学者、斎藤秀一ひでかつ(1908~40年)の活動が21日、名古屋市で開かれる日本エスペラント大会分科会で取り上げられる。特高の迫害を何度も受けながら信念を貫いた秀一への再評価が広がっている。(編集委員・吉原康和)
 

ローマ字やエスペラント語で書かれた秀一の日記の一部

 秀一は駒沢大東洋文学科在学中に日本エスペラント学会の会員となった。31年に卒業後、郷里・山形県内の小学校教員になったが、子どもたちにローマ字を教えたなどとして、翌32年に「左傾化教員」の疑いで警察の取り調べを受け、免職となった。
 その後もガリ版雑誌「文字と言語」で、植民地で日本語を押し付ける政策を「言語帝国主義」と批判。秀一の研究活動を「国際共産主義活動の一環」と見なす特高に、治安維持法違反容疑などで繰り返し逮捕された。秀一は肺結核が悪化、40年9月5日に32歳の若さで死去。今年は没後80年の節目となる。
 日本エスペラント協会の前評議員萩原洋子さん(73)は「秀一の真髄は言葉は民衆のものと考え、世界に開かれたツールとしてエスペラントで発信し、治安維持法で弾圧されても信念を曲げなかったことにある」と高く評価する。
 

◆21日、名古屋で日本エスペラント大会分科会

 分科会では、秀一の伝記を著した日本ウェルネススポーツ大の工藤美知尋教授が「特高に奪われた斎藤秀一の青春」と題して講演する。107回の歴史を誇る日本エスペラント大会の分科会で秀一の活動が取り上げられるのは初めてという。工藤教授は「秀一の日記を読む限り、良心的な言語学者にすぎない。容疑自体が特高による捏造の可能性が高い」と語る。
 仏教界で秀一の業績に着目し、5年前から全国各地で講演会などを開催している別府良孝さん(72)=名古屋市中川区の龍潭寺住職=は「昨年、曹洞宗宗務総長は顕彰文を出したが、この分科会は戦後75年の節目に平和の尊さを教えてくれる」と話す。
 大会は20~22日で、名古屋市の愛知県産業労働センター(ウインクあいち)で開かれ、全国から約240人が参加予定。約40の分科会があり、秀一に関するものは21日午後3時から1109号室で。問い合わせは、同協会=jek2020@jei.or.jp=へ。参加費(3日間)は一般7500円、中高生1500円など。

 エスペラントとは 1887年、ポーランド出身の眼科医L・L・ザメンホフが考案した国際共通語。簡単な文法で母音5、子音23を使用する。言語の違う民族間の相互理解を目的に、言語と文化の橋渡しを目指した。組織は日本を含め約100カ国にある。


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