年間79億回、驚異的アクセス数の気象庁HPに批判殺到 どうして?

2020年9月17日 05時55分

15日から広告掲載を始めた気象庁ホームページ。大雨警報を知らせる画面にもオレンジ色の健康補助食品の広告が大きく表示された=一部画像処理

 気象庁のホームページ(HP)で15日から、企業広告の掲載が始まった。同庁は予算難にあえぎ、年約2億4000万円のHP運営経費のうち、8700万円を広告収入で賄うためだ。総閲覧回数が年79億回というアクセスの多さを武器に広告で稼ぐ算段だが、庁内やOBからは「ただちに命を守る行動を、と言いつつ広告を見せるのか」「きちんと国費で賄うべきだ」と批判が相次ぐ。(宇佐見昭彦)

◆大雨警報よりも広告が目立つ?

 広告は、HPの防災情報のほぼ全ページに掲載。避難の判断で重要な「危険度分布」「警報・注意報」などのページも含まれる。広告はスマートフォンでも表示され、利用者の閲覧履歴に応じて業種や品目が変わるという。記者が15日にHPを見ると、岩手県に大雨警報が出ている画面で、健康補助食品のオレンジ色の広告が目を引いた。
 気象庁が広告掲載を発表したのは7月6日。関田康雄長官は同15日の会見で「一定の収入が得られるなら有効活用する。それだけ国民の(税の)負担が減る。(広告で防災情報が見づらい、表示が遅いなど)視認性や速報性を損なわないようにする」と話した。
 背景には予算難がある。災害が相次ぎ同庁の業務が重要性を増す中、気象衛星やレーダー、スーパーコンピューターなどの維持更新には巨額の費用を要する。一方、本年度の当初予算は594億円余で、10年前より約25億円減った。人件費を除いた物件費は236億円余と、「アベノマスク」の全戸配布に投じた約260億円より少ない。

◆職員たちは「えっ?」

 気象庁のあるベテラン職員は「最初に聞いた時、同僚たちも『えっ?』という反応だった。信じられない、おかしいでしょ、と言いたくなる。もし賛否を問えば、本心では現役職員の過半数が反対だろう」と、強い違和感を吐露する。
 「1番必要なのは、財務省からきちんと予算を獲得すること。先日の(最大級の警戒を呼び掛けた)台風10号を見ても、防災情報は重要。それを伝えるHPにどうして予算が届かないのか」。職員は、現場の悲鳴にも似た本音を口にした。

◆OBからも「発想がおかしい」

 OBの元予報官も「災害情報に関係ないものを一緒に載せる発想がおかしい」と話す。「大地震や津波の情報も流す時に、別の情報を一緒に流すのはだめ。災害情報だけに徹するべきだ。それぐらいのお金は国の基本的予算で見るべきではないか」
 同じく元予報官の萩原健司さん(73)は「広告入りのHPは民間の気象会社のようだ。国民の税負担が減ると言うが、気象庁は(測候所廃止などで)定員をどんどん削減し、負担を下げてきた。年間予算は国民1人当たり500円ほどで、これが多いのか」と嘆く。
 気象庁は民営化や独立行政法人化の圧力にさらされてきた。だが、採算性を追えば、地道な観測(データの蓄積)や長期的視野の人材育成が軽視され、地方の切り捨てや、防災力低下を招く。萩原さんは、広告で経費を賄う手法を「民営化の議論に再び火をつける恐れもある」と危ぶむ。

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