原発に頼るエネルギー政策、新政権の今こそ転換の機会 日立は英国での建設を断念

2020年9月17日 05時56分

アイリッシュ海に面する日立の原発建設予定地。後方は取り壊される旧原発=英アングルシー島で(阿部伸哉撮影)

 日立製作所は16日、凍結中だった英国での原発計画から撤退すると発表した。風力など再生可能エネルギーの発電コストが下がりつつある中、原発事故後に急騰した建設費や運営費を負担するのは経済合理性を欠くと判断したとみられる。この日発足した菅政権は安倍政権の継承を掲げるが、価格競争力を失った原発に固執するエネルギー政策の転換を迫られるのは必至だ。

◆日立は16日に撤退を表明

 日立は英ウェールズ北部のアングルシー島で原発2基の建設を目指したが、2019年1月に計画を凍結した。安全対策などで事業費が3兆円規模に膨らむ一方、英政府の支援拡大やほかの民間企業の出資が見込めず、1社ではリスクを負えないと判断。売電価格を巡っても英政府との交渉がまとまらなかった。
 日立は16日に発表した声明で、撤退を決めた理由に関して「凍結から20カ月が経過し、新型コロナウイルス感染拡大などにより投資環境が厳しさを増している」と説明した。
 原発計画に反対している地元住民団体「PAWB」は、正式表明に先立ち撤退を歓迎するコメントを発表。「原発が建設されれば何世代にもわたり人々の生活を危険にさらしただろう」と指摘し、日立に対して「この場所が他の開発業者に売却されても、原発計画が起きないようにすることを求める」と訴えた。

◆原発輸出、安倍政権ではすべて失敗

 政府は05年、国内メーカーが海外の原発建設工事全体を請け負う「原発輸出」を打ち出し、12年に発足した第2次安倍政権も継承して成長戦略に取り入れた。だが成功例はなく、英国以外にベトナムやトルコ、リトアニアなどでの計画も中止や中断状態に。米原発企業を買収した東芝も巨額損失を計上した。
 背景には、東京電力福島第1原発事故を境に世界的に安全対策費が増し、風力をはじめ再生エネの発電コストが原発より低くなったことなどがある。
 原発に批判的なNPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長は「原発の経済性が低いのは明らか。新設に限らず再稼働であってもコストは高く、温存させれば国民負担が増え、世界的な再生エネ拡大からも取り残される。新政権になった今こそ原発依存のエネルギー政策を変える機会だ」と指摘している。(妹尾聡太)

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