菅首相の「地方を大切に」は本当ですか? かつては「めざす政治 地方優先の打破」と主張

2020年9月17日 05時50分
 第99代首相に選出された自民党の菅義偉新総裁(71)は、総裁選の最中から「地方分権を進める」と繰り返し公約に掲げている。しかし、本当に地方分権に力を入れる人なのか。菅氏の過去の国会などでの発言を見ると、そもそも、そんな信念の人ではなかったのでは、との疑問が浮かぶ。(望月衣塑子)

◆国会質問で「問題がある」

記者会見する菅義偉首相=首相官邸で

 「秋田の農家の長男として生まれた私の中には、一貫して地方を大切にしたい。日本の全ての地方を元気にしたい。こうした気持ちが脈々と流れています。この気持ちを原点として知恵を絞り、政策を行ってきました」
 16日に行われた初の首相会見で、菅首相は熱く語った。
 だが、過去には、地方よりもむしろ選挙区(衆院神奈川2区)の横浜市など大都市を重視する発言をしてきた。2001年6月の衆院決算行政監視委員会で、菅氏はこう質問した。
 「横浜市は平成8年(1996年)の国税徴収額が1兆3千億、(地方交付税交付金などとして)還元されたのが約3000億。しかし、ある県は、国税徴収額が1500億で3500億円も還元されている」。大都市の方が多く税金を納めながら、交付金などが地方に多く還元される制度について「問題がある」と訴えた。

◆ホームページでも「予算配分の見直し」主張

 その主張については、2000年9月ごろの菅氏のホームページに詳しい。「私のめざす政治 『年功序列、地方優先政治の打破』」として、こう厳しく指摘した。
 「皆さんの支払う国税の大部分は地方の道路や施設の投資に使われています。大都市はさまざまな都市問題を抱え、財政も火の車です。世界を捜しても日本しかない地方交付税制度はもう見直さなければいけません」と主張している。
 さらにプロフィル欄では、「都市で徴収された国税の大部分が地方に投資されており、効果にも疑問」と強調。「厳しい財政状況の中で国民の血税が使われるのです。立ち遅れている都市政策を充実させるためには、都市と地方の予算配分の見直しこそが不可欠です」と訴えていた。

◆総裁選の発言の真意は?

平嶋彰英氏

 元総務省自治税務局長の平嶋彰英氏は地方債課長だった2005年6月21日、議員会館を訪れ、地方交付税制度を説明した際の菅氏の発言を鮮明に覚えているという。
 「私は努力したところがもっと報われるような仕組みでないといけないと思う。そういう意味で交付税制度はおかしい」
 菅氏は、出身地である秋田県の人口3000人ほどの村に、全校50人程度の学校を2つも作った事例を引き合いに「立派な体育館もある。こういうことをやっていける仕組みはおかしいのではないか」と指摘したという。
 平嶋氏が、どこでも義務教育を受けられるようにするために小さな学校もやれる仕組み作りが必要で、そのために交付税制度があると説明したが、納得してもらえなかったという。
 今回の自民党の総裁選で「自助・公助・共助」をスローガンに掲げた菅氏。平嶋氏は、「競争を重視する新自由主義的な考えは、当時から垣間見えていた。総裁選で地方の自民党員に人気のある石破茂氏への対抗策なのか『地方分権を』と声高に言い出していることに違和感を感じた。決して地方に優しい人ではない」と分析する。

◆識者「政治家の仕事は公助」

 「菅氏は『自分がたたき上げで、直属の上司をたてながらここまでやってきたんだ』という自負もあり、他者にも同じように強い者に従えということを強いている気がする」と平嶋氏。その上で「コロナ禍で格差拡大が進む中、社会の底辺で苦しんでいる人々にどこまで菅氏が向き合い、公助をするのか。政治家の仕事はそもそも公助だという視点が必要だ」と話した。 
 菅氏事務所に15日昼にホームページでの過去の記述や平嶋氏とのやりとりについて質問状を出したが、16日午後6時の期限までに回答はなかった。

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