菅新首相、地元の声聞いて

2020年9月17日 07時42分
 衆院神奈川2区(横浜市西、南、港南区)選出の菅義偉氏が十六日、第九十九代首相に選出され、菅内閣を発足させた。県内に地盤を持つ首相は小泉純一郎氏以来。地元では喜びや期待の声が上がる一方、新型コロナウイルス対策など喫緊の課題に向き合う現場からは厳しい注文も相次いだ。 (杉戸祐子、山本哲正、西岡聖雄、村松権主麿、曽田晋太郎、丸山耀平)

◆コロナ対策「司令塔組織作って」

井関治和さん

 国内初の感染者を受け入れるなど一月から新型コロナの対応に当たってきた相模原協同病院(相模原市緑区)の井関治和院長(61)は「今後も繰り返し感染拡大の波が来ると想定される。感染症にどう立ち向かうか、長期的視野に立った態勢作りに万難を排して取り組むべきだ」と注文する。
 重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験から感染症対応を指揮する組織を作った台湾を引き合いに「日本は後れを取っている。米疾病対策センター(CDC)に相当する司令塔を作るべきだ。菅氏の実行力に期待したい」と話す。
 来年一月、近くに移転して新病院を開院する計画だが、感染者の受け入れによる風評被害で来院患者が減るなど経営難は深刻という。「未曽有の困難に最前線で闘ってきた病院に財政支援を求めたい」と訴える。

新江良一さん

 県病院協会の新江良一会長(67)は、患者を受け入れるため空き病床を確保した病院への国の補助金の対象が四月以降に限られていることについて「二月からクルーズ船ダイヤモンド・プリンセスの感染者に対応してきた地域の実情を理解し、二、三月の費用も補填(ほてん)してほしい」と望む。
 県内の病院は新型コロナ患者を受け入れていない施設も受診控えなどで減収になっている。「病院経営が立ちゆかず、経済的な原因での医療崩壊につながる」とし、患者本人の負担を据え置いた上での入院基本料や診療料の大幅増や、医療機関への持続化給付金の導入を求める。

◆経済・景気「格差縮める改革を」

 新型コロナの影響で景気が低迷する中、「かわさき子どもの貧困問題研究会」代表の本田正男弁護士(59)は「消費税を時限的にでも廃止してほしい」と訴える。安倍政権の経済対策について「雇用が良くなったと言われても、実質賃金や中間層の所得は落ちた」と批判。低所得層ほど負担感が重くなる消費税を廃止すれば「低所得者は非常に助かる。中小企業も救われる」とし、拡大した格差を縮める税制改革を求めた。

佐藤守さん

 一方、箱根町観光協会専務理事の佐藤守さん(50)は安倍政権が進めた観光施策の継続、強化を期待する。「『Go To トラベル』は軌道に乗ってきた。東京都発が対象に加われば秋の行楽シーズンは明るい」。協会によると、新型コロナで落ち込んだ観光客は前年の七〜八割にまで回復。都内の個人客が戻れば、完全復活に近づくという。
 菅政権に望むのは分かりやすさ。GoToはオンライン予約をしない高齢者らには不便で、新型コロナ対策の補助金は省庁ごとに分かれている。「縦割りを解消し、支援メニューをパッケージにするなど利用しやすくして」と注文した。

越川昌光さん

 在日米海軍横須賀基地(横須賀市)の正面ゲート近くにある「ドブ板通り商店街」の振興組合理事長の越川昌光さん(72)は「商店街の現状は最悪」と話す。コロナ禍で観光客向けの飲食店や土産物店は売り上げが低迷し、米軍の外出制限により外国人向けのバーは開店できない店もある。「持続化給付金などだけでは事業を継続できない。国を挙げて支援策を考えてほしい」と訴えた。

◆カジノIR「撤回する潔さ持って」

森誠一郎さん

 安倍政権が推進し、横浜市が誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)について、横浜市元技監の森誠一郎さん(75)は「国として示した方針を変えるのは容易ではないだろうが、コロナ禍で収益も見込めない。間違いだったと撤回する潔さを持ってほしい」と菅氏に要望する。
 森さんは市職員としてみなとみらい21地区の都市計画などに携わり、菅氏が1987年に横浜市議に初当選した時、都市計画局で市内の交通ネットワークの総合計画を担当していた。当時の菅氏について「市政課題に対する問題意識が高く、謙虚に相手の話を聞く人だった」と評価する。
 菅氏は安倍政権の継承を主張して首相の座に上り詰めた。ただ、森さんは「カジノは街の品格を汚す。ばくちの上がりを財政の足しにする考え方は不健全だ。自分の考えや路線を打ち出してほしい」と話した。
 横浜商工会議所の上野孝会頭は「新型コロナ対策と経済対策の両立という最優先課題に内閣の総力を挙げて取り組んでほしい」とした上で「ウィズ・コロナ時代の経済成長を着実なものとするため、IRを含めたインバウンド戦略の再構築などにも果敢に挑戦し、確固たる日本経済の復興を実現していただきたい」とのコメントを発表した。

◆政治姿勢「説明責任果たして」

矢後保次さん

 「国会や記者会見を『問題ない』『その指摘は当たらない』などという答弁でやり過ごし、丁寧に説明してこなかった」。官房長官時代の菅氏の姿勢を批判するのは、元横浜市職員で神奈川自治体問題研究所副理事長の矢後保次さん(78)。
 菅氏のお膝元の同市南区に住む矢後さんらは昨年末、安倍晋三前首相が主催した「桜を見る会」に後援会関係者が多数招待されていた問題を受け、菅氏に後援会関係者の参加状況を尋ねる公開質問状を出した。回答は得られず、秘書が「国会答弁や記者会見で答えた通り」と説明したという。
 菅氏は安倍政権の「継承」をアピールしているが、「安倍氏の言った通りでなく、国民の声を聞くべきだ。説明責任を果たし、出すべき公文書は公開するように求めたい」と訴える。

大川隆司さん

 かながわ市民オンブズマン代表幹事の大川隆司弁護士(80)は、野党が昨年の「桜を見る会」の関連資料を求めた日に政府が参加者名簿を破棄したことについて「情報公開制度を空洞化させる行為」と厳しく批判する。「論点や争点を隠して結論だけ出すやり方は民意に基づく政治と真逆だ。国民に説明責任を尽くすという最低限のルールは守ってほしい」と注文した。

◆再生エネ「地域で進められる仕組みを」

川岸卓哉さん

 東京電力福島第一原発事故を受け、太陽光発電による地域分散型発電に取り組んできたNPO法人「原発ゼロ市民共同かわさき発電所」理事長の川岸卓哉さん(35)は「市民が主体的に地域で再生可能エネルギーを進められる仕組みをつくってほしい」と訴える。
 安倍政権は太陽光により発電した電気を電力会社が買い取る価格を年々下げていて、現場では売電で収支がとれなくなることへの心配が強くなっているという。「安倍政権は他国に見られる脱原発の潮流に逆らい原発に固執してきた。菅政権には時代に逆行しないでほしい」と願う。

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