菅さん、県内の声聞いて 新首相選出で期待、注文

2020年9月17日 07時51分

昨年の知事選で、当時の官房長官として候補者応援に駆けつけた菅義偉首相=県内で

 自民党総裁の菅義偉氏が十六日、首相に選出された。先だっての党総裁選では安倍政権の路線継承を訴え、目指す社会像として「自助・共助・公助」を掲げた菅氏。どのような政策を打ち出し、市民生活に何をもたらすのか。県内のさまざまな立場の人に、新首相への期待や注文を聞いた。(杉原雄介、浅野有紀、飯田樹与、前田朋子、近藤統義、渡部穣)

◆大学生

 沖縄県南風原(はえばる)町出身で、現在はさいたま市桜区に住む埼玉大三年の伊波壮人(まさと)さん(21)は「菅さんは記者会見で冷静に受け答えしている姿が印象的。しっかり仕事をしてくれそう」と語った。一方で気掛かりなのは、菅氏が改憲に意欲的なことだ。「沖縄出身なので憲法には関心がある。戦争に巻き込まれないよう、憲法九条は変えてほしくないので、沖縄県民や国民の声をきちんと聞いてほしい」と力を込める。
 政策面では新型コロナウイルス対策に期待。「緊急事態宣言の時期はアルバイトの収入が減って大変だった。また感染が拡大した時には、国民の命を守ることと、経済を回すことを両立させてほしい」と求めた。

◆障害者

 脳性まひによる四肢の重度障害があり、さいたま市浦和区の多機能型事業所「アトリエ・モモ」に通う山本智世さん(59)は、菅氏の「国の基本は自助・共助・公助」という発言を、「自分たちで何とかしなさいという意味に聞こえる」と受け止める。一人暮らしで、家事支援に来てくれるヘルパーには、自分より高齢で八十代の人もいる。不安は尽きず、「みんな、お金がなくて将来を心配している。一度、現実を見に来てほしいですね」と訴えた。
 また、国民と誠実に向き合う政権になるかどうか「当てにしていない」と諦め顔。「森友学園での疑惑を説明しない政権を支えた人。また似たようなことが起こるんじゃないか」

◆医療従事者

 県保険医協会理事長で、三郷市でクリニックや介護施設などを経営する大場敏明さん(73)は、前政権の路線継承は「困ります」と率直に明かす。安倍政権下では医療費抑制策が前面に出て、現場にしわ寄せが来ていたと指摘。さらに新型コロナの影響で、協会加盟の医療機関の多くは厳しい経営状況に陥っているとして、新政権には「医療・福祉に重点を置くよう、軌道修正を求めたい」と念を押した。
 加えて菅氏が改憲に前向きな姿勢を示していることに対して、憲法九条を念頭に「医療も生活も、平和な状態でこそあり得る」と強調。こちらも前政権からの路線変更を求めた。

◆子どもの支援

 県子ども食堂ネットワーク代表の本間香さん(60)=さいたま市大宮区=は「急場しのぎの感は否めないが、永田町を出て市井の人の声に耳を傾ける政治をしてほしい」と訴えた。
 子ども食堂では、コロナ禍の中でも感染防止に注意しながら弁当を配布しているが、予定個数を上回るほど注文が殺到することもあるという。前政権が景気回復を成果にあげる一方で、本間さんは「食べられない家庭がものすごく増えている」と危機感を抱く。行政の目が届きにくい貧困家庭とのつながりが生まれるなど、子ども食堂ならではの効果もあるとして、「貧困対策に特化した助成金を子ども食堂に支給するなど、対策をとってほしい」と述べた。

◆企業経営者

 土木工事用の資材を扱う会社を営む春日部市の男性(50)は「無派閥の政治家として、しがらみのない政策ができるのでは」とみる。一方で経験不足が指摘される外交手腕を不安視し、「安倍政権は米国と良好な関係を築いてきたが、菅さんが大国とどう付き合っていくのか方針が見えない」と話した。
 自身の会社は新型コロナの影響で工事の延期や中止が相次ぎ、国の持続化給付金などは助けになったという。新政権には「景気回復のため、まずは感染の収束に全力を挙げてほしい。Go To トラベルのような特定の業界だけでなく、他の業界にもさらに支援を向けてほしい」と新型コロナ関連の政策の充実を望んだ。

◆農業

 深谷市でネギやブロッコリーなどを生産する農業馬場茂さん(69)は、「農家は高齢化や後継者不足で苦しんでいる。希望を持って農業が続けられるよう、せめてサラリーマン並みの休日と報酬が得られるような環境づくりに力を入れてほしい」と話し、農産物の輸出拡大につながる政策に期待を寄せた。
 また、農業は気候の影響を受けやすく、近年は大雨や大型の台風など異常気象が続いていることから「温暖化対策も大事」と強調。菅氏が秋田県の農家出身ということもあり、「農家や庶民の苦労、立場が分かってくれると期待している。派閥に影響されることなく、独自色を出してほしい」と話した。

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