早期教育 焦らないで 塾、習い事で心身不調 小児科医がアドバイス

2020年9月18日 07時30分
 「英語は幼児期から」「難関校合格には先取り学習を」−。早期教育に熱心な親もいる中、慶応大医学部小児科主任教授の高橋孝雄さん(63)は「多くの親子をみてきた経験から、早期教育にほとんど意味はない」と指摘する。親は氾濫する情報に焦って振り回されるのではなく、肩の力を抜きつつ、自信を持って子どもに向き合ってほしいと訴える。 (砂本紅年)
 「最近、精神的に追い詰められて病院に来る子どもたちが増えた」と高橋さん。摂食障害や不登校、原因不明のめまいや痛み…。多くは経済的に恵まれた家庭に育ち、幼少期からスポーツ、塾、英会話、音楽など複数の習い事をしていた。
 「子どもの教育で後悔したくない」と、習い事や勉強に追い立てる親は昔からいた。最近は、インターネットなどの早期教育の情報に接し、「今やらないと子どもが苦労する」とプレッシャーに感じ、飛びつく親が増えているという。
 「正しく説得力のある情報も多いが、かといって必ずわが子の役に立つわけでも、まねしなければならないものでもない」と高橋さん。というのも、子どもの能力は、生来備わっている遺伝子のシナリオに応じ、「必要な時に自然と花開くから心配ない」という。
 高橋さんによると、体重一〇〇〇グラム未満の超低出生体重児と呼ばれる赤ちゃんは脳にしわがほとんどない状態で生まれるが、保育器での治療中に、遺伝子で約束された通りにしわが刻まれていくという。「どんなに不利な環境でも、遺伝子が変わらず、子どもたちを守っているからです」
 親が躍起になり、いろんな習い事をさせて能力を探し回らなくても、逆にある時に何かをさせなかったとしても、「しっぺ返し」がくるものではない。遅かれ早かれ必要な時に、できることはできるようになる。みんなより早くできたとしても、それ以上でも、それ以下でもない。
 では、親は子どもの成長にどう関わればいいのか。高橋さんは、子どもが自分を好きでいられる「自己肯定感」、自分で決める「意思決定力」、他者をいたわる「共感力」を、親が伸ばしてあげてほしいとする。
 子どもの弱点に目を奪われ、劣等感を味わわせるのではなく、何かに夢中になっている様子があったら、親が望むようなものでなくても、つまらないことでも、少しほっておいてあげるといい、とも。その子の得意なことを無理強いの教育でねじ曲げず、本来の個性を生かす方がいい。「『やればできる』という成功体験を多く積ませることが不可欠」
 ネット上で称賛される子どもと、わが子を比べ焦ることは絶対にしない。「すごいね」「よくできたね」と褒めながら、何でも過程を楽しむことが大事だ。「子育てに思い悩むのではなく、二度とない大切な時間を幸せな気持ちで過ごしてほしい」と話している。
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 高橋さんは最新刊「子どものチカラを信じましょう」(マガジンハウス)=写真=で、小児科医からみた子育ての心構えを説いている。
<たかはし・たかお> 1957年生まれ。慶応大医学部卒業。88年、米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務、ハーバード大医学部の神経学講師も務めた。94年帰国後、慶大小児科へ。日本小児科学会前会長、日本小児神経学会前理事長。著書に「小児科医のぼくが伝えたい 最高の子育て」(マガジンハウス)。

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