<寄席演芸の人びと 渡辺寧久>演者と二人三脚で 浪曲曲師・玉川みね子

2020年9月18日 07時31分

玉川太福を見詰めながら弾く玉川みね子=東京・浅草木馬亭で

 うなる浪曲師の隣で三味線を合わせるベテラン曲師、玉川みね子(67)。
 きっかけは浪曲師の夫、二代目玉川福太郎さん(二〇〇七年五月二十三日、六十一歳で死去)に請われたこと。「年配の曲師が多く、先々を考えて弾いてほしいと言われました」。二十三歳の手習いだった。
 曲師育成のための三味線教室に通う一方、同じ山形県出身の夫の舞台で鍛えられた。「『余計な手(伴奏)を弾くな』とよく言われました。本番中もにらまれましたよ。それが怖くて」と振り返る。
 教科書も譜面もない。日によって違う手を入れる。一人前になるには十年かかるといわれる世界だ。

愛用の三味線。浪曲では太棹(ふとざお)を使い、ひざ掛けを使って体に密着させて弾く

 日本浪曲協会によれば、協会員の曲師は十六人(九月十五日現在)。毎月一〜七日、東京・浅草の木馬亭で開催される浪曲定席で、看板曲師のひとりとして浪曲師を支える。
 夫の六番目で最後の弟子となった玉川太福(だいふく)(41)と合わせることが多い。
 「声出し(リハーサル)もなく、事前に何をやるかも教えてもらえない。恐ろしいですよね」と笑い、「なんかね、その緊張感がいいらしいですよ。他の人は事前にネタを教えてくれますし、声出しもしてくれます」。
 舞台上手の定位置から太福を見詰め、古典か新作か、はたまた映画「男はつらいよ」シリーズなのか、とネタを探る。
 「古典のネタは、弾く型のようなものがあり骨が折れますが、新作は自由。多少気が楽です」と、伴奏はほぼ即興。「そこにお客さんの反応がかみ合えば、またこっちも盛り上がります」と、大衆芸能ならではの手応えの大切さを語る。
 一昨年のクリスマスイブに弟子入り志願してきた玉川鈴(りん)(22)を育てつつ、「うまく弾ける自信がない(あまり組んだことがない)演者(浪曲師)と組むこともある。今も勉強させていただくという感じです」。演者との幸せな二人三脚を謙虚に目指し、弟子に伝える。 (演芸評論家)

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