文化のとりで/ソウルフード/不条理な現実

2020年9月18日 08時01分

石川修巳(48歳)川崎支局

◆文化のとりで

 本紙川崎版や横浜・神奈川版で今月、川崎市の腹話術師しろたにまもるさん(79)の連載を始めた。人形「ゴローちゃん」との掛け合いで、喜怒哀楽を織りなす語りが好評だ。ウェブで読んだ方からの反響も多い。
 「八十六歳までは現役でいたいんだ」と、しろたにさん。その決意には理由があった。
 地域文化のとりでとして、自ら参加する地域劇団が一九九四年、市内に小劇場を兼ねたけいこ場をつくった。総工費は一億六千五百万円。うち四千五百万円を市民のカンパで賄った。
 月二十万円のローンが終了するのは八十六歳。そこへコロナ禍が襲い、公演や賃料などの劇団収入が途絶えた。「僕らがとりでを守らないと」。再起をかけ、秋公演の実現を目指す。

◆ソウルフード

 川崎には「ソウルフード」がある。元祖ニュータンタンメン本舗のタンタンメン。強めの塩味をベースに、ニンニクやトウガラシなどを組み合わせた一杯だ。パンチのある味わいだけに、「取材前は控えて」と同僚に教わった。
 創業五十六年。京浜工業地帯の工場労働者たちにスタミナをつけてもらおうと、創業者が担々麺をアレンジしたという。
 昨年十一月にカップ麺が発売されると、地元川崎では箱買いが続出、店頭から消えた。メーカー側は今月のリニューアルで、初回出荷量を前回の三倍にマシマシ。さて売れ行きは。

◆不条理な現実

 「親は死ねないじゃないか!」。自閉症の十九歳長男と暮らす男性の叫びが胸に響いた。
 川崎市で先日、長男が警察に逮捕されたという。集合住宅のインターホンを押す迷惑行為をしたとして、職務質問された長男はパニックに。暴れてひじが警察官に当たってしまった。
 父親は警察で「再発防止のために、どうするつもりか」と尋ねられた。親の責任は痛感している。父子家庭のため、自分一人の付き添いにも限界はあるから、移動支援のヘルパーを求めてきた。けれども、なかなか見つからなかったのだという。
 事件後すぐに、ヘルパーを手配してもらえた。「優先度が上がった」との理由だった。「つえは、転んでから差し出される。それが現実なんです」
<いしかわ・おさみ> 神奈川県出身。2003年入社。子どものころから人見知り。取材メモを見て「すごいですね。速記ですか」とよく尋ねられるけれども、これは楷書です。

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