10代で性暴力被害受け結婚、置き去り…少女たちの涙<さまよえるロヒンギャ(中)>

2020年9月19日 05時55分

3月、マレーシアのクランで、遠いバングラデシュにいる母親を思い、涙を流す少女オジバ

 ミャンマーから逃れたイスラム教徒少数民族ロヒンギャが10万人以上住むマレーシア。首都クアラルンプール近郊の港町クランには、ロヒンギャの大きなコミュニティーがある。

◆親兄弟皆殺し…盲目の夫と物乞いの日々

 古い平屋を借り、少女ベゴム(16)=仮名=は盲目の夫(22)と、他の家族3組と身を寄せ合う。
 ベゴムがミャンマー西部ラカイン州の村にいた2017年8月、治安部隊によるロヒンギャ武装勢力の掃討作戦の中、大規模な迫害が発生。ベゴムは両親ときょうだいを全員殺され、自身も集団強姦ごうかんに遭った。
 バングラデシュの難民キャンプに逃れたが、肉親を失い、いとこのいるマレーシアに渡る決意をした。
 ブローカーの手配した船には約200人のロヒンギャらがいた。1カ月かけてタイ南部に。歩いて国境を越えた後、車に乗り、昨年12月にクランに着いた。
 到着後間もなく、紹介された夫と結婚した。性被害者は「汚れている」と敬遠されるため、知られないうちに、といとこらに促されたからだ。
 目の不自由な夫に仕事はなく、物乞いで多少の金を得るのみ。親類の援助にすがる。ベゴムは「キャンプと厳しさは同じ。落胆している」と目を伏せた。

◆「母に会いたい」「常に追われる意識」

 別の少女オジバ(13)は年上のいとことともに、ミャンマーからマレーシアに渡った。いとこはオジバを別のロヒンギャ女性に預け、連絡が取れなくなった。
 記者が友達の数を聞くと首を振り、涙を流した。「バングラデシュのキャンプに逃れた母親に会いたい」
 ロヒンギャが多いマレーシア西部ペナン島で、国際非政府組織(NGO)「国境なき医師団」が難民向けに開く診療所は、心の健康の問題を月平均60件扱う。
 ロヒンギャらは「追われてないか常に気になる」「眠れない」「自殺したくなる」と悩みを訴える。

◆死の危険を賭して渡航も…

 医師団の担当者は「ミャンマーやバングラデシュでトラウマ(心的外傷)となるような出来事を目にした上、マレーシアでも法的な権利や保護を得られない」と背景を説明する。特に女性について、保守的なイスラム教徒が多いロヒンギャの間では立場が弱く、傷つきやすいと懸念する。
 死の危険を賭し、船でマレーシアを目指すロヒンギャは後を絶たない。だが、新型コロナウイルス対策で入国規制が強化され、着岸拒否の事例も出ている。
 マレーシア当局は6月、船で漂流していたロヒンギャ250人以上を拘束。首相のムヒディンはコロナによる経済悪化や資金減少を理由に「これ以上の難民は受け入れられない」と表明した。ロヒンギャを取り巻く環境は厳しさを増している。(敬称略、クランで、北川成史、写真も)

マレーシアのロヒンギャ マレーシアは国教がイスラム教で、ミャンマーを逃れたロヒンギャの主要な行き先になってきた。国連難民条約に加盟しておらず、正規就労や公立学校への就学ができる合法的な地位は与えていないが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による難民登録は認めている。ロヒンギャの登録は約10万1000人。難民登録すると病院の治療費が半額になり、逮捕や送還を免れやすい利点がある。

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