菅首相にどう臨む? テレビ局への「圧力」目立った安倍政権 路線受け継ぐ可能性

2020年9月19日 07時19分
 菅義偉政権がスタートした。7年8カ月続いた安倍晋三政権、安倍自民党時代は報道機関、特にテレビ局への「圧力」が取り沙汰された。安倍政権の継承を掲げる菅首相はどんなメディア戦略を掲げ、それに対し各局はどう臨むべきか。テレビにゆかりのある2人、「安倍政権のメディア圧力を受けた」と主張する元経済産業省官僚で政策アドバイザーの古賀茂明さん(65)、日本テレビなどで報道に携わった上智大新聞学科の水島宏明教授(62)に聞いた。 (聞き手・鈴木学)

◆「圧力慣れ」はいけない 「報ステ」降板・元官僚 古賀茂明さん

 安倍政権、安倍自民党の負の遺産は二つ。官僚支配とマスコミ支配だ。菅氏が安倍前首相とつくり上げたもので、最も正統な継承者が菅氏である。
 影響は私も受けた。過激派組織「イスラム国」(IS)による日本人拘束事件で、安倍首相の対応に疑問を呈した「I am not ABE」発言がダメ押しになり、テレビ朝日「報道ステーション」の月一回のコメンテーターを降板させられた。
 私の場合は秘書官筋から局への抗議だったが、安倍政権は放送をチェックし、番記者を通じて不快感が局に伝わるようにする一方、局の上層部を懐柔した。重層的な圧力で、意志のある人も戦えなくなり、政権に批判的なキャスターらは画面から消えていった。
 安倍自民党は二〇一四年の衆院選で、在京テレビ各局に「選挙期間における放送の公平中立」を求める文書を送り付け、圧力文書と批判されたが、公職選挙法に関係のない今回の総裁選でもマスコミに同様の要請をした。ただ、記事にしたのは東京新聞などわずか。マスコミに問題意識がなくなっていることが問題だ。
 「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」。「報ステ」最後の出演で紹介したガンジーの言葉だが、圧力に慣れてしまうと知らないうちに自分が変わってしまい、問題に気が付かなくなる。菅政権で支配は強化されかねない。マスコミは今また、この言葉をかみしめるべきだ。

◆分断戦略に乗らない 元日テレ報道記者・水島宏明上智大教授

 放送局は電波の許認可を国に握られているが、それを行使した時に国が裁判で勝てるのか、実は突き詰められてはいない。「最高裁まで争っても国が勝つのは難しいのでは」と指摘する憲法学者は少なくない。
 では、なぜ局が政府や与党の顔色をうかがうかといえば、「停波」を持ち出されることによる対応を迫られるためで、面倒を回避したいというのが本音。目を付けられることは最初からしない方向に向いてしまった。
 ただ、こうした問題は放送局だけでなく、メディア全体の責任もあると思う。かつての首相とメディアの関係であれば、首相がある局にだけ出演するといった恣意(しい)的な選択をメディア側が許さなかった。
 今は単独取材はおかしいよりうれしいと、個々が目先の利益に走った。政権側の分断の戦略に乗ってしまい、報道機関全体の利益を損なうことになった。
 安倍政権下では、総務相が政治的公平性を欠く放送をした局に電波停止を命じる可能性に言及した一方、番組の政治的公平などを定めた放送法四条の撤廃が検討された。安倍氏が放送法に縛られず、持論を展開できるネットの世界を体験し、米国のような政権の意向を反映した放送を念頭に置いたものとみられる。
 同様の規定を撤廃した米国は、放送局の党派色が強まり、社会の分断が助長された。四条撤廃は首相の諮問機関の答申には盛り込まれなかったが、放送界が保ってきた放送倫理がなし崩しになる恐れがあった。菅氏は法で局を規制していく印象だが、いずれにせよ、放送局は自社のことだけ考えている場合ではないはずだ。

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