<ふくしまの10年・連載半年 読者から>(5)責任を取るべきは人間

2020年9月19日 07時49分

楠さんのペンションに宿泊し「大学で動物福祉学を学びたい」と言っていた女学生から届いた手紙=画像の一部を加工

 放射能汚染された牛を苦労して飼い続けた福島県富岡町の畜産家、坂本勝利(かつとし)さんの軌跡を追った「牛に罪があるのか」(六月十六〜同二十七日)には、東京都世田谷区在住で山梨県でペンション「くすの木」を営む楠正昭さん(76)から<連れ合いと涙ながらに読みました>とメールをいただきました。
 特に、富岡に戻れなかった二週間の後、駆けつけた坂本さんに、やせた二十三頭の牛が甘えるシーンに心を動かされたそうです。
 楠さんに電話で話を聞きました。「牛は賢い動物。空腹と喉の渇きで飼い主の坂本さんへの信頼の糸が切れそうなとき、帰ってきた坂本さんに『忘れないで帰ってきてくれた』と感じたはず。坂本さんの背や尻の温かみに安堵(あんど)したと思います」
 原発事故後、福島・浜通りの牛は原則として殺処分になりました。
 四国出身で、子供のころ家で牛を飼っていたという楠さんは「原発事故は人間が起こしたもの。人間が取るべき責任を、勝手に牛に転嫁し、殺処分していいはずがありません」。安全な地域に牛を移して最後まで命をつなぎ、畜産家には東電や国の責任においてえさ代などをちゃんと補償するのが筋道だとの考えです。
 連載を読んで、楠さんは十五年ほど前、ペンションに泊まりに来た若い女性のことを思い出しました。「高卒資格の認定試験に合格し、大学では動物福祉学を学びたい」と夢を語り、その後実際に、東京農業大から東北大大学院に進んだそうです。
 家畜も生きている間は幸せである状況を研究する学問分野。「私も妻も初めて聞く専門領域でした。女学生は今ごろ三十二、三歳と思いますが、どうされているでしょうか?」と、近況を知りたがっていました。  (山川剛史)
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