給付わずか3割、滞る政府の家賃支援 「早く助けて」個人事業主ら悲痛

2020年9月20日 05時55分
 新型コロナウイルスの影響で売り上げが減った個人事業主らを支援する政府の「家賃支援給付金」の給付が停滞している。家賃支援の必要性は緊急事態宣言が出た4月ごろから叫ばれているが、政府が申請の受け付けを始めたのは7月中旬。そこから2カ月が過ぎても、給付率は約3割にとどまる。コロナ禍で半年以上苦しみ続けている個人事業主らは「早く助けて」と悲鳴を上げる。(石川智規)

家賃支援給付金の資料を見直す多賀堂学さん(左)、恵美子さん夫妻=東京都板橋区で

 「給付金があれば年を越せると期待したが、政府は本当に助けてくれるのか」
 東京都板橋区でブティックを経営する多賀堂学さん(57)と妻の恵美子さん(50)は7月19日に給付金を申請。だが今も支給はない。
 春の服飾品の売り上げは昨季より6割減った。それでも家賃を払わねばならず、知人から仕入れた有機野菜も店頭に並べて急場をしのぐ。学さんは「申請の1カ月後に『必要書類の添付がない』とメールが来て書類を出し直し、それから返事がない。いつまで待てばいいのか」と頭を抱えた。
 家賃給付金は個人事業主の場合、最大300万円が一括給付されるため期待は大きい。恵美子さんは「地域の店をつぶさないためにも早く給付を」と訴えた。

◆ネットのみ、書類は複数、何度もやりとり…

 コンサートのちらしなどを作る東京都中野区のデザイナー森永卓さん(38)は、7月17日に申請。ここ数カ月はほぼ仕事がない中、要領を得ないやりとりが続き、今月10日にようやく受け取った。森永さんは「何度も書類を突き返され、長かった」と話した。
 支給遅れの背景には、売り上げ減の証明に加え、賃貸借契約書など複数の書類が必要で手続きが複雑なこともある。帝国データバンクの旭海太郎氏は「売り上げがなくても家賃は支払わなければならず、小さい事業者ほど負担が重い。年末に向けた資金繰りを支えるためにも早急な支給が必要だ」と指摘する。

◆中小企業庁「不正受給を防ぐため審査に時間」

 家賃支援給付金は、なぜ給付に時間がかかるのか。中小企業庁の担当者は「賃貸借契約書の内容や書式があまりにも多種多様な上、不正受給を防ぐための審査に時間がかかる」などと釈明する。
 賃貸借契約書、本人確認書類、直近3カ月の賃料支払い実績を証明する書類…。家賃給付金の申請に必要な書類の一部だ。オンライン申請のため各書類をスキャナーで電子化する手間もかかる。「持続化給付金よりも書類の準備が大変」と嘆く申請者は多い。
 家賃給付金事業の予算額は2兆242億円。政府は実際の給付事務を、リクルートなど6社でつくる「家賃支援給付事務運営コンソーシアム」に942億円で委託した。

◆4000人から6000人に 審査体制を拡充

 中小企業庁によると、申請書類を確認する人員は約4000人(8月時点)。だが個人事業主らからの申請約49万件に対し、給付は約15万2000件(いずれも9月17日時点)と約31%にとどまる。改善に向け、同庁は11日、10月までに審査体制を6000人規模に拡充すると発表。担当者は「今の人員では、着実に審査した上で給付できない恐れがある」と作業の遅れを認めている。
 家賃支援給付金は、売り上げが前年同月比5割以上または3カ月連続で3割以上減った中小企業や小規模事業者らに、家賃の3分の2を6カ月分まとめて支給する制度。法人は600万円、個人は300万円が上限。

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