<ふくしまの10年・連載半年 読者から>(6)復興への道 まだ見えず
2020年9月20日 07時05分
「牛に罪があるのか」(六月十六〜同二十七日)には、富岡町の佐藤めぐみさん(55)=いわき市に避難中=からも<(原発事故の影響が)なかったことではなく、現在進行形でまだ続いているということを報道関係の方には伝え続けていただきたい>とメールが寄せられました。同町に残る帰還困難区域に自宅やお墓があり、お墓参りの際に話を聞きました。
連載で取り上げた、原発事故後も牛を飼い続けた同町の畜産家、坂本勝利(かつとし)さんの名前は義父から聞いたことがあるそうです。「実家で牛を飼っていました。牛は家族も同然で坂本さんの気持ちがよく分かります」
その後のイラストレーターの鈴木邦弘さんらの連載も読み、「(原発事故の被災地のことを)見てくれている人がいる。忘れられてはいないんだ」と感じたそうです。
佐藤さんは「多くの記事は、復興事業でこんな施設ができた、中間貯蔵施設への汚染土の搬送が進みましたとかきれいな部分しか書かれていない」と、不満を感じています。
自宅は優先的に除染を進め、二〇二三年の避難指示解除を目指す区域にあります。年度内には解体、敷地の除染もされる見通しといいます。
更地になった後、佐藤さんは小さな家を建てようかとも考えていますが、まだ決められません。
事故前の放射線量は毎時〇・〇五マイクロシーベルト程度だったのに、家の中でも毎時一マイクロシーベルト弱、庭では二マイクロシーベルト超ありました。周辺には除染のめどもない地域もあり、愛着のある町がどうなっていくか見通せないからだと言います。
「連載には勇気づけられました。でも、まだ多くの被災者は『復興』のスタートラインに立てていないんです」
(山川剛史)
=おわり
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