振り返るあの一手と自作PCのこだわり 藤井聡太王位インタビュー

2020年9月21日 06時00分

◆局面が激しくなる手を選ぶ

 ―札幌市の第2局(7月13、14日)は、先手の木村前王位の得意戦法「相掛かり」になった。
 相掛かりの可能性が一番高いと思っていました。序盤から手の広い将棋で、前例のない形になったと感じました。1日目の途中から自信のない局面が続き、2日目にははっきり形勢を損ねてしまいました。
 ―終盤で粘りを見せ、逆転勝ちと話題になった。
 開き直るというか、何とか勝負に、という姿勢で指していました。ずっと苦しい将棋だったので、王位獲得に向けて非常に大きな1勝だったと思います。
 ―形勢が悪い時、あくまで最善手を選ぶか、相手が間違えやすい手を探すか、どちらのタイプか。

インタビュー中、笑顔を見せる一幕も

 自分は苦しい時の粘り方があまりうまくない方だと思うので、課題ではあるんですけど…。自分で読んで、はっきり負けまでいかない程度で、それなりに局面が激しくなるような手を選ぶようにしています。
 ―「勝負めし」は1日目が「中華セット」、2日目が「ビーフステーキカレー」。若々しい選択だった(笑)。
 中華セットは、2年前の王位戦(同じホテルで指された第3局)で、当時の菅井竜也王位が頼んでおられたのを写真で見て、おいしそうだなと思った記憶がありました(笑)。2日目は局面が進んでいる場合が多いので、カレーが手堅いかなと。
 ―北海道の印象は。
 家族旅行で訪ねたことはあったが、札幌は初めて。時間があれば市街地の方にも行ってみたかった。来年を楽しみにしたいです。

◆温泉に入って気がついた

 ―第3局(8月4、5日)は神戸市の有馬温泉。先手番で「矢倉」の戦いを挑んだ。
 (緊急事態宣言による対局中断が明けた)6月以降、角換わりと矢倉を半々くらいの比率で指していたので、次は矢倉というつもりでした。いろんな戦型で指せればと思っていました。
 ―木村前王位の封じ手は△2三歩だったが、終局後の感想戦で、△2三銀=図=の手があったと指摘していた。

第3局の封じ手後、藤井王位が心配した△2三銀。後手は次に△2四歩と打ち、守りを固める狙いがある。実際の封じ手は△2三歩だった

 1日目の夜、温泉に入っている途中で△2三銀に気付きました。そうすると、こちらから動いていく必要があるのですが、ぱっとする対応が見えなくて。そこから結構考えました。夜の12時くらいには寝られたと思いますが。
 ―結局、封じ手は別の手だった。攻める展開になったが、どうみていたか。
 リズム良く攻めることができ、形勢は少し良いのかなと思っていたんですが、(具体的な)手が分からないという感じになってしまった。早い段階でしっかり先まで読み進める必要があったのかなという気がしています。
 ―木村前王位の懸命の受けに、珍しく決め損なう場面もあった。
 木村先生にうまく踏みとどまられたところがあり、一気に寄せるのか、じっくりやるのか、指し手の方針が定まらないまま、時間に追われてしまいました。
 ―逆転には至らず、何とか3勝目を挙げた。
 最後は負けにしたかなと思っていました。秒読みの時間が長く、1局を通して大変な将棋でした。時間がないときは方針を決めるのが大事ですが、はっきりできなかったのがミスにつながったと思っています。
 ―「勝負めし」は「神戸牛すき鍋膳」と「肉うどん」。選択のポイントは。

第3局の「勝負めし」に頼んだ「肉うどん」。神戸牛がふんだんに使われている

 初日は「すき鍋」という言葉にひかれました。肉うどんは(対局場の旅館)「中の坊瑞苑」さんの名物と聞いていたので。結果的に(神戸牛が)かぶってしまいましたが。
 ―結局、温泉の方は楽しめたのか。
 「金泉」(*1)に入りました。結構色があるので、最初入るのに勇気が要ったんですけど(笑)。入ってみると肌触りもよく、いいお湯でした。
 ―3連勝で臨んだ第4局(8月19、20日)は、強気の飛車切りの封じ手が話題となった。
 初日から想定以上に激しい変化の多い展開になりました。本譜のように進んだら(飛車を)切るつもりでしたが、その後の変化が複雑なので、(封じ手の前に)あらためて考えました。飛車を逃げる手もあったと思うので、難しいところですが、2日目は終始、積極的に指せたので、結果的には良かったと思います。
 ―勝てば史上最年少の二冠ということで、震えたりはしなかったか。
 こちらの玉も危ない形になり、際どい局面が続いていたので、そういうことは浮かばなかったです。

第2局で、タイトル戦で初の封じ手を記し、立会人の深浦康市九段(右)に手渡す藤井王位

◆移動時は外の景色を見る

 ―今回は時間がなかったが、九州や福岡で行きたかったところは。
 福岡は3回目だったんですが、まだラーメンが食べられていないので、次は機会があればと思います。
 ―対局中のおやつに「マンゴー杏仁プリン」を連続で頼んでいた。
 どういうものか正体が分からないところがあったんですが、食べやすく、2日ともおいしくいただきました。機会があればまた、とも思います(笑)。
 ―木村前王位と番勝負を戦ってどう感じたか。
 受けと攻め、どちらも力強いという印象が深まりました。第2局の中盤、あえて自玉のコビン(玉の斜め前)を開けた手など、気付かない手を指され、苦しめられる場面も多かった。非常に勉強になりました。
 ―全4局で、自分らしさが出たのはどこか。
 第1局と第4局で、こちらから踏み込んでいったところは、自分の良さが出せたかなと思います。
 ―移動中や対局の夜はどう過ごしたか。
 移動のときは外の景色を見ることにしています。対局1日目の夜はある程度、局面のことを考えて、見通しが立ったらすぐお風呂に入って寝る、という感じでした。
 ―今シリーズの対局場は第1局がチャペル、第2局がホテル、第3局が温泉旅館、第4局が能楽堂と、バラエティーに富んでいた。
 1局ごとに雰囲気が違ったが、どこもすばらしい対局場を用意していただき、その中で指せるのは幸せだと思いました。特に能舞台での第4局は、そういう神聖な場所で指せるのは身の引き締まる思いでした。

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