脱・「お爺ちゃん政治」 EU諸国で若手トップが続々誕生する理由

2020年9月21日 18時50分

フィンランド・ヘルシンキで昨年12月、新内閣発足に当たり、記者会見するマリーン首相(右から2人目)とオヒサロ内務相(同3人目)ら女性閣僚=ロイター・共同

 米国の大統領選挙は8月、共和党のトランプ現大統領(74)と民主党のバイデン氏(77)の70代対決に決まった。日本で16日に発足した菅内閣の平均年齢は60.4歳、自民党4役の平均は71.5歳だ。一方で欧州連合(EU)では、世界最年少の31歳で就任したオーストリアのクルツ首相(34)をはじめ30、40代の首脳が珍しくない。背景には、閉塞感が漂う社会で、変化への国民の期待や政党の模索があるようだ。(パリ支局・竹田佳彦)

◆フィンランドのマリーン首相(34)「年齢や性別は考えたことがない」

 「自分の年齢や性別について考えたことはない。考えるのは、何のために自分が政界入りしたのかということだ」。昨年12月にフィンランドで誕生した女性首相のマリーン氏(34)は記者団にこう話した。
 母親と同性パートナーの家庭に育った。貧困を経験し、福祉制度の大切さを実感したという。20歳ころに政治活動を始め、27歳で地元市議に当選。3年後に国会議員となり、運輸・通信相も務めた。「カリスマ性がある」と評され、郵便改革を巡る混乱で不信任案を突きつけられた前首相の後任として、白羽の矢が立った。
 同じく34歳のオーストリアのクルツ氏は、両親が教師の家庭に生まれた。16歳で国民党に参加。めきめきと頭角を現し、6年後には圧倒的多数の支持を受けて青年部総裁に就いた。11年には内務省に新設された移民統合事務局長に24歳で抜てきされた。
 EU27カ国の首脳で30代は上記2人、40代は8人、50代10人、60代6人で70代は1人。フランスのマクロン大統領(42)とエストニアのラタス首相(42)は30代で就任し、EUのミシェル大統領(44)も2014年に38歳でベルギー首相になった。

◆既存政党では社会の変化に対応できず

 なぜこれほど若い首脳が相次ぎ誕生しているのか。
 ヘルシンキ大学のテイボ・テイバイネン教授(政治学)は、戦後生まれのベビーブーム世代が一斉に引退する中で「政党が高齢者の集まりというイメージを変え、若者をひきつける必要があった」と読み解く。
 フィンランドでは80年代以降に生まれた若者で、グローバル化や環境問題、性的多様性などの議論が活発化。党内の議論でも若手が主導権を握るようになったという。オーストリアのクルツ氏は、増加する移民の流入を管理する必要性を訴え、社会への統合策も打ち出して支持を固めた。
 仏国立科学研究センターのブルーノ・コトレス研究員(欧州政治)も、既存政党の変化に注目する。グローバル化による人や物の大規模移動で起きた混乱に「従来の政党は十分対応できず支持を失った」と指摘。「党内の再編による若返りと同時に、新しいリーダーシップによる新勢力の台頭が起きた」と分析した。
 変化を託された若手首脳には、政治に無関係の家庭環境に育った例が珍しくない。若いだけでなく、実業界や政党青年部などで実績を上げ、評価されて就任した事例が目立つ。投資銀行幹部を務め、右派や左派という伝統的なイデオロギー対立にとらわれない新党「共和国前進(REM)」を結党したマクロン氏もその1人だ。
 EUでは、温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロとするなど、長期的な取り組みが本格化している。若い首脳の誕生が持つ意味合いについて、テイバイネン氏は「政治が将来世代に向き合うというメッセージだ」と指摘した。

◆40代以下の欧州連合(EU)首脳(※は女性首脳)


年齢  名前・肩書      国名      父親の職業
34歳 クルツ首相      オーストリア  教師
34歳 マリーン首相※    フィンランド  不詳
42歳 ラタス首相      エストニア   元国会議員
42歳 フレデリクセン首相※ デンマーク   技術者
42歳 マクロン大統領    フランス    学者
42歳 アベラ首相      マルタ     元大統領
45歳 ウィルメス首相※   ベルギー    学者・銀行家
47歳 マトビッチ首相    スロバキア   不詳
47歳 ベッテル首相     ルクセンブルク ワイン商
48歳 サンチェス首相    スペイン    経営者
44歳 ミシェル大統領    EU       元外相

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