「家族」に集計されない私たち 早い法整備願う<かぞくのカタチ㊤>

2020年9月23日 05時50分

リビングで2人の出会いや「結婚」への思いを語る平野絢音さん(左)と野村茉由莉さん=東京都府中市で

 陽の当たるリビング。2人で白湯さゆを飲み、動画投稿サイト「YouTube」を見ながら、ヨガで汗を流す。朝ご飯を食べて洗濯、掃除を済ませて、近所のカフェへ―。
 今年4月に東京都府中市に引っ越してからの、毎週日曜朝の「ルーティーン」。「地味だけど、一番楽しい時間かも」。薬剤師の平野絢音あやねさん(26)と、打楽器奏者で派遣社員の野村茉由莉まゆりさん(27)は顔を見合わせ、笑った。
 2人は8月、府中市で「パートナーシップ宣誓」をした。同じ日に「社会観念上の婚姻に相当する関係」との契約を書いた公正証書を作成し、「結婚」した。
 昨夏に交際を始め、「あった方がいいよね」と東京・下町の区からパートナーシップ制度がある府中市に。日本では現状、同性カップルは婚姻できない。自治体が関係を認める制度では法的な効力は乏しいと思い、補うために数万円をかけて公正証書を作った。
 「今は直面していないけれど、緊急の時に配偶者と同じように病院で面会や手術同意ができないかもしれない。法定相続も税金の配偶者控除も受けられないので心配」と茉由莉さんは話す。

◆「想像以上に受け入れてくれた」

 それぞれの家族には交際中から紹介した。「思えばそんな感じがあったよな」と絢音さんは父親に言われた。茉由莉さんの父親は「一人じゃないなら安心したよ」と声を掛けてくれた。
 職場でも上司や同僚に伝えた。絢音さんの上司は法律婚でなくても結婚休暇を取れるように人事課に掛け合ってくれ、勤務する病院では先日、パートナーシップ証明書を提出すれば「婚姻に準じて取り扱う」との方針が出た。「上司が動いてくれたのがうれしかった。声を上げてよかった」と絢音さんは声を弾ませた。
 近所のよく行く店では「姉妹ですか」と聞かれ、「パートナーです」と答えると、年配女性から「あら、そうなの」と笑顔が返ってきた。レストランで結婚のお祝いプレートが自然に出てきて、祝福してもらったこともある。「思っていた以上に、私たちの周りは受け入れてくれている」と2人。だからこそ、人々の意識に日本の法制度が追い付いていないと感じる。

◆国勢調査では「見えない家族」に

 今月から始まった国勢調査では、同性カップルは集計されず、いとこやめいと同居しているとして把握される。“見えない家族”となることに、2人は「夫婦と変わらない生活をしているのに。正確じゃない」。
 来年、家族と友人を呼び、結婚式を挙げる予定だ。「私たちの周りにいる、結婚を祝福してくれる人たちの優しさが全国の共通認識になったら。そして、早く結婚できるようになってほしい」。リビングのソファに並んで座り、茉由莉さんが話すと、絢音さんもうなずいた。
 結婚した夫婦と子ども、という家族が「典型的」とされた時代は終わった。現実は法制度の枠を超え、多様な「かぞくのカタチ」は、既にすぐそばにある。明るく、前向きに日々を生きる3組の姿を追った。

 同性カップルと国勢調査 人口や世帯状況などを調べるため5年に1度行われる国勢調査で、世帯主とその配偶者が同性の場合、同性カップルとは集計されず「他の親族と同居」として扱われる。同性婚の実現を目指す団体などが今年8月、総務相宛てに同性カップルも集計・発表するよう要望書を提出。高市早苗総務相(当時)は、今回調査では集計しない考えを明らかにした。

 (この連載は奥野斐が担当します)

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