国内外へ お気軽にオンライン旅行 離れていても一緒に体験

2020年9月23日 07時45分

テレビ会議システムで兵馬俑から中継するガイドの王さん

 新型コロナウイルスの拡大で、気軽に外出を楽しめなくなっている今、オンラインを活用して旅行気分を味わうサービスが広まっている。自宅にいながら海外の世界遺産を巡れたり、事前にご当地グルメが届いたり、内容も充実してきた。体力に不安のあるシニア層も楽しめる新しい旅行の形として人気を集めそうだ。 (熊崎未奈)

◆現地ガイド解説

 「ニーハオ! こちらは晴れていますよ。日本はどうですか」
 中国在住のガイド王勇(おうゆう)さん(45)が画面越しに手を振った。ツアー予約サイト運営会社ベルトラ(東京)が企画・販売した中国・西安の世界遺産、兵馬俑(へいばよう)を巡るオンライン旅行。九月上旬にテレビ会議システムを使って中継し、六人が参加した。
 王さんが解説しながら歩いて散策。兵馬の石像の展示スペースでは、像の細かな装飾もしっかり確認できた。最後には質疑応答の時間もあり、「行くのに一番良い季節は?」「地震で像は倒れないですか?」などとやりとり。一時間半ほどの旅で、王さんは「コロナが収束したら、ぜひ遊びに来て」と締めくくった。
 同社の「オンライン・アカデミー」には七月から九月上旬までに約千人が参加。料金は二千〜五千円程度で、国内外の美術館や寺院、ワイナリーなどをガイドが案内する。
 広報担当の三田村孝晃さん(39)によると、従来のツアーより五十〜六十代以上の利用者が数%増えたという。「これまで海外には体力的に行けなかったという人たちが参加してくれたのでは」と話す。
 新型コロナの影響が長期化する中、オンライン旅行を手掛ける企業は増え、内容も多岐に。日本航空は七月、島根県の離島・海士(あま)町への「仮想フライト」を島ファクトリー(同町)と共同企画。特産のサザエなどを焼いて味わえるセットや機内で提供しているドリンクが自宅に届き、客室乗務員や現地の人とも交流できるという内容だ。

◆味、香りも満喫

 阪急交通社(大阪)も、事前に自宅にお土産が届く国内外のツアーを企画。今後も台湾やイタリアのツアー、米アラスカ州のオーロラ中継も企画している。
 オンラインの果物狩りも登場。テレビ会議システムで結び、参加者が画面越しに選んだ果物を農家が郵送する。茨城県とJAほこた(同県鉾田市)は六月に特産のメロン狩りを、大阪府柏原市は八月末にブドウ狩りを企画した。
 旅行ジャーナリストの村田和子さん(51)は「オンライン旅行では視覚と聴覚だけでなく、舌やにおいなど五感をフル活用すると、より楽しめる」と話す。現地の食べ物やお酒を自分で準備するのも手だ。
 離れて暮らす家族を誘って行く、「オンライン家族旅行」もおすすめ。事前にお酒や食べ物を家族に贈り、一緒に味わうのもいい。村田さんは「帰省もしづらい今、画面を通して家族の顔が見え、体験も一緒にできるいい機会になるのでは」と話す。
 将来行きたい土地の予習としても活用できる。村田さんは「海外旅行が気軽になっていた分、現地の歴史や食を勉強する時間が足りなかった」と指摘する。かつて行った場所を学び直す機会にしてもいい。
 新型コロナの影響は先が見えず、気軽に旅行できるようになるには時間がかかる。宿泊・観光施設の感染対策費がかさみ、旅行の単価が上がっていくことも予想される。村田さんは、オンラインと現実の旅を併用する新たな形が定着する可能性を指摘。「一つ一つの旅行が大切なものになる。オンラインで、旅の前後に学びの時間を取ることでより充実するのではないか」と話す。

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