医療従事者5000人超は無報酬 五輪組織委、コロナ前の計画変えず

2020年9月24日 06時00分
 新型コロナウイルス感染症への対応で医療現場の負担が増す中、東京五輪・パラリンピックの競技会場などで活動する医療従事者に対し、大会組織委員会は「報酬を原則的に支払わない」とする延期前の計画を踏襲する方針であることが、関係者への取材で分かった。必要な人員は5000人以上。大会では選手や観客への感染防止対策など新たな仕事が加わる可能性もある。コロナ禍で人手不足や経営難に悩む病院や医師会から反発が出ている。(原田遼)

所属病院から東京五輪・パラリンピックへの派遣が決まり、救命救急の合同研修を積む医師、看護師ら=2019年11月24日、東京都中央区で(原田遼撮影)

 組織委によると、今夏の大会では観客の熱中症対策などのため、収容人数1万人以下の会場に医師2人、看護師4人を配置。収容人数が1万人増えるごとに医師1人、看護師2人を増やす計画だった。
 報酬を支払うのは各会場の責任者計約50人だけで、それ以外は無報酬との条件で、病院や医師会に人材提供を依頼。今春までに数十の病院から協力を取り付けた。
 このうち過半数の病院は職員を出向など勤務扱いで派遣し、給料から医師らに活動の対価を支払う。その他の病院は希望者に休暇を取らせ、ボランティアで参加してもらうという。
 組織委幹部は本紙の取材に、医療従事者の待遇について「これまでの計画と変えない」と明かした。ただ、新型コロナ対応で人手不足や経営難に陥っている病院もあることから、「感染拡大が落ち着いたら再度、協力をお願いしないといけない」と話した。
 来夏の大会では、選手や観客の感染防止対策が重要な課題となる。政府、東京都、組織委の対策調整会議は23日の会合で、入国する選手の検査のあり方を協議。競技会場や観客を含めた対策を年内にもまとめる方針で、現行計画より医療従事者の業務内容が増えたり、救護所など医療スペースの見直しが必要になったりする可能性がある。

◆人手不足の現場は見直し求める…コロナ禍以前からの声も

 東京五輪・パラリンピックの競技会場などへ医師や看護師を派遣する医療現場からは、計画の見直しを求める声も上がる。
 約30人の職員を派遣する東京都内の大学病院の責任者は「特に看護師は新型コロナのしわ寄せで人手が足りない。来年派遣できるかどうか」と嘆く。「職員をただ働きさせるわけにはいかない」と勤務扱いで派遣するため、病院側が大会の医療経費を肩代わりする構図。「組織委は、必要人数や待遇をゼロから協議するべきだ」と話した。
 加盟する医師約50人を派遣する東京都医師会の幹部は「コロナ対応でへとへとになった後、酷暑の中、ただで働いてくれとはとても頼めない」と、協力に難色を示している。
 会場や選手村を支える8万人の大会ボランティアは無報酬で、交通費が1日当たり1000円支給される。これに対し、医療のような専門性の高い業務には報酬が必要との声は、コロナ禍以前からあった。
 国内のスポーツ大会では医療従事者への日当は一般的で、関係者によると医師の場合、Jリーグで3万円、高校野球の地方大会で1万円が相場という。
 五輪・パラリンピックの全会場では1日当たり計200~300人の医療従事者が必要になるとみられ、競技時間が長いため交代制になることも考えられる。仮に日当を1万円とすると、1日で数百万円、大会全体で数億円かかることも予想される。
 組織委によると、2012年ロンドン、16年リオデジャネイロ大会で活動した医師は無報酬だった。

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