指さし会話で外国人も安心 薬剤師が考案のポケット本出版 亀戸の薬局発、全国へ

2020年9月24日 06時27分

受付で指さし会話帳の使い方を説明する薬剤師の広瀬明香さん=江東区で

 薬局やドラッグストアの薬剤師が外国人への応対で心配するのは、自分の説明がきちんと伝わったかどうかだという。用量や用法などを間違うと命にも関わるからだ。そんな悩みに応える本を、江東区亀戸の薬剤師らが7月に出版した。薬局での会話文や薬の種類、症状などの単語をお互いに指さしながら使うことができる。「この1冊でひと安心」。亀戸発のアイデアが、全国の薬剤師たちを支える。
 「処方せんはありますか」「どんな症状ですか」。江東区亀戸六の「のぞみ薬局」で、薬剤師広瀬明香(はるか)さん(32)が小さな本を指さしながら説明してみせた。
 この本は白衣のポケットに入るサイズの「薬局・ドラッグストアのためのらくらくコミュニケーションBOOK」(じほう、二千二百円)で、広瀬さんと知人の看護師、医師が監修した。症状などを患者に聞く場合や、薬の使い方、副作用の説明などを英語と中国語で対訳を示し、片仮名で発音の仕方も添えた。携帯翻訳機も進化してきたが、薬の種類など専門用語や「ちくちく」「ズキズキ」など痛みの種類までは十分に対応できないという。
 基になったのは、お互い指で日英の文章を指さしながら使うA4判のカード。近所にインド人が多く住む団地があるなど外国人の患者も多く、薬局員は日本語と身ぶり手ぶりで懸命に説明していた。広瀬さんが同薬局に入った四年前、「スタッフのために何かツールを作って」と上司に頼まれたのがきっかけだ。
 学生時代に東南アジアなど七カ国で、保健衛生などのボランティアをしてきた広瀬さん。渡航時に重宝した「旅の指さし会話帳」(情報センター出版局)を参考に、受付時、服薬指導、在庫がない場合の対応の三種類の対訳カードと、お薬手帳やジェネリック医薬品(後発薬)の説明文を作成。同僚らに使ってもらった。

薬局で使われている指さし会話カードとポケットサイズの本「薬局・ドラッグストアのためのらくらくコミュニケーションBOOK」(手前)

 これが一都三県で十九店舗を経営する会社内で評判になり、各店舗に配布。日本薬剤師会学術大会のポスターセッションでも発表した。一昨年には、のぞみ薬局などを運営する株式会社フォーラルのホームページで公開、自由にダウンロードできるようにした。
 本にしたのは、東京五輪を前に薬局やドラッグストアが在日、訪日外国人を支える場所になれたらいいな、という思いからだ。カードは英語版だけだったが、中国語も加えた。ベトナムやタイ、ロシア語など多言語化の要望もあるという。
 一七年に社内十四店を対象にしたアンケートでは、スタッフの95%が外国人客の対応で困ったことがあると回答。「伝えたいことが伝わらない」「伝えたことを理解したかが分からない」との声が多かった。広瀬さんは「このツールで片言でも自信を持って話せば、コミュニケーションは深まる。患者をより正確に理解し、生活スタイルに合った指導ができる」と話す。
 薬学と社会の関わりを研究する社会薬学を大学で専攻した広瀬さん。ポケット本から将来はタブレット端末でのコミュニケーションも視野に、「外国人が、対話することで体が楽になるようなヘルスケアの部分を薬局がもっと担いたい」。
 文・五十住和樹/写真・由木直子
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