タイ反政府デモ 民主化要求止められぬ

2020年9月24日 06時32分
 タイで、プラユット政権の退陣などを求める反政府デモが拡大し王室批判も公然と語られ始めた。「現政権は軍事政権の続き」とみられているためだが、流血の事態は絶対に避けなければならない。
 タイでは、昨年の総選挙で五年間の軍政に表向き終止符を打ったが、首相には軍政のトップだったプラユット氏が就任。さらに二月、若者らが支持した野党が憲法裁判所に解党を命じられ、反政府運動に火が付いた。
 学生らは香港の民主化運動にも刺激され、首相の退陣や議会の解散・総選挙、軍政下で定められた憲法の改正などを訴えている。
 要求には、タイではタブーとされる王室改革も加わった。国王への中傷に最長禁錮十五年の不敬罪があり、外国メディアにも適用される。しかしプミポン前国王が四年前に八十八歳で死去し、長男のワチラロンコン現国王が即位してから意識が変わってきたという。
 前国王時代に、重要事項は国王が裁定する「タイ式民主主義」という独特の政治システムができあがった。一九九二年の「暗黒の五月事件」では政敵同士を跪(ひざまず)かせて仲裁するなどカリスマ性豊かだったが、現国王は国を空けて外国で暮らす期間が長く、前国王ほどの存在感を示していないとされる。
 先週末には、首都バンコクの王宮前広場に若い世代ら数万人が集結。王室批判を前面に出し、王室関連予算の透明化や王室への表現の自由などを求めた国王あての請願書を警察当局に委ねた。王室擁護の政権との対立は決定的となったが、最悪の衝突は避けられた。
 元来、軍部と民主化勢力との衝突などで政情が不安定なタイでは第二次大戦後だけで十数回のクーデターが起きている。七三年には、当時の軍政に抗議する学生ら七十七人が死亡する「血の日曜日事件」が起きた。軍政は崩壊し前国王の任命によって文民政権が誕生したが、代償は大きかった。
 今回の抗議運動を「この事件以来の規模」と報じる地元紙もある。軍政の流れをくむ現政権への不満は膨らみつつある。半世紀前にはなかった王室への改革要求は、現状維持を求める政権や保守層との分断も招いている。
 学生らの次回の大規模デモは十月十四日という。「血の日曜日事件」と同じ日で、プミポン前国王の命日の翌日。平和的なデモと冷静な対応が求められる。その上で政権は、議会の解散・総選挙を含め、民主的な手法で混乱収拾の手だてを考えるべきではないか。

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