<プロに聞く くらしとお金の相談室>テレワークで年金減る?

2020年9月24日 09時42分
 生活面では、年金や医療費、税金、老後を見据えた資産運用など、お金の疑問をひもとくコーナー「プロに聞く くらしとお金の相談室」を始めます。読者からの相談を基に、専門家の解説やアドバイスを毎月紹介し、人生100年時代を生きるための方法を探ります。初回は、コロナ禍で広がるテレワークの思わぬ影響とは−。

<Q>テレワークで年金減る?

 新型コロナの感染拡大を受け、勤務先の外食関連企業で5月からテレワークが導入され、出社が月3〜4日になりました。以前は定期代に当たる約1万5000円が通勤手当として毎月支払われていましたが、実費精算となり、5月以降は月3000〜4000円に減額。年金に影響するといううわさを聞き、気になっています。
 (関東地方在住、40代男性、パートの妻と幼稚園の長女の3人暮らし)

<A>通勤手当減れば影響も 社会保険労務・士木村省吾さん

 通勤手当が減ると、年金に影響する可能性があります。厚生年金の保険料や、将来の年金額の基になる「標準報酬月額」が変わる場合があるからです。
 標準報酬月額とは、月給を国が「グループ分け」したもの。例えば、月給が29万円以上、31万円未満の人の標準報酬月額は一律で30万円。月給は一人一人違うため、ざっくり「30万円」といったグループに分け、保険料や支給額が決まる仕組みで、グループを「等級」と呼びます。
 基となる月給は「報酬月額」と呼びます。基本給に加え、残業手当や通勤手当、住宅手当など毎月支給されるものは大抵含まれます。相談者のもとの月給が29万5000円で、標準報酬月額が30万円とすると、通勤手当が1万円減れば、月給は28万5000円に。等級は一つ下がり、標準報酬月額は28万円に変わります。
 この場合、毎月の厚生年金保険料は2000円ほど下がりますが、将来もらえる年金も少なくなります。例えば、入社後に40年間働いた場合、等級が一つ違うと、退職後の老齢厚生年金は年間5万円ほど変わってきます。病気や事故で障害を負った場合の障害年金や、家族が受け取る遺族年金にも影響します。
 さらに標準報酬月額は健康保険料や介護保険料、病気やけがで仕事を休んだ場合に支給される傷病手当金、出産手当金の計算の基にも。たかが通勤手当、されど通勤手当です。
 働き方改革やコロナ禍で、残業手当が減っている人も多いのでは。仕組みを知れば、保険料や将来もらえるお金の見通しが分かり、踏まえた対応ができます。

社会保険労務士の木村省吾さん

 例えば、自転車か電車か通勤手段を選べて、手当の額が違えば、保険料や年金額がどうなるのかも判断材料に。月収が減り、年金額が心配なら、個人で入れる年金を活用する手も。「たいした額でないので何もしない」と考える人もいるでしょう。それも制度を知っていればこそです。
<きむら・しょうご> 1966年、愛知県知多市生まれ。大学中退後、トラック運転手を14年勤めた後、ハローワークの職業訓練を受けて社会保険労務士の資格を取得。2005年、名古屋市で「木村社労士・FP事務所」(現在の事務所は同市熱田区)を開業した。中日文化センターや大学、高校などで講師を務める。

◆<詳しく>「標準報酬月額」 保険料でチェック

 標準報酬月額は、厚生年金で8万8000円〜65万円の32等級、健康保険では5万8000円〜139万円の50等級ある。健康保険料は加入する健康保険で率が異なるが、厚生年金保険料は厚生年金基金の加入者を除き一律のため、給与明細の保険料と厚生年金の等級表を照らし合わせれば、自分の等級が分かる。表は日本年金機構のホームページなどで閲覧できる。
 例えば、給与明細で天引きされている保険料が2万5620円なら、標準報酬月額は28万円で等級は18と分かる=表参照。
 標準報酬月額は原則毎年4〜6月に支払われる月給の平均で決まり、9月〜翌年8月の1年間適用される。ただ、変動が大きく等級二つ以上の差が出るなどすれば、変動のあった月から3カ月間の平均で標準報酬月額を決め、4カ月目から変更される。コロナ禍でテレワークが広がった時期は、毎年の標準報酬月額が決まる4〜6月と重なる。手当などが減り、等級が下がれば、10月に天引きされる9月分の保険料から反映される。給与明細を確認してみよう。 (河郷丈史)

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