首相、女性の声もっと聞いて 菅政権の女性・子育て支援に不安も

2020年9月25日 05時50分
 安倍政権の路線継承を掲げた菅義偉首相は「女性活躍」「少子化対策」の看板も引き継いで担当相を任命した。菅内閣が発足して1週間余。首相は待機児童対策や不妊治療の保険適用に言及しているが、安倍政権では女性・子育て政策の分野で達成できなかった目標も目立つ。当事者団体や識者は、現状への不安や不満から注文の声を上げる。(坂田奈央、柚木まり)

◆「待機児童ゼロ」は先送り

 子育て世代の有志らでつくる市民団体「みらい子育て全国ネットワーク」(東京)の天野妙代表(45)は菅内閣の待機児童対策について「期待したいが、このままでは厳しい」と話す。
 安倍政権が掲げた「2020年度末に待機児童ゼロ」の目標は今月、先送りが確実となった。今年4月1日時点の待機児童数は約1万2000人。1994年の調査開始以降で最少だが、特定の施設だけを希望したといった理由で集計から除かれた「隠れ待機児童」は昨年より約900人増えた。
 天野氏は、保育の質の低下など課題は多岐にわたるとして「首相には当事者の声をちゃんと聞いて政策に反映してほしい。現状を丁寧に把握し、迅速に進めてほしい」と注文する。

◆「国難」に位置付けも出生数は減少

 安倍政権は少子化を「国難」と位置付け、希望する数の子どもを持てる「希望出生率1・8の実現」を掲げた。だが、出生数は減少を続け、19年は女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」が1・36だった。
 首相は不妊治療の保険適用拡大を打ち出したが、政府全体として少子化にどう立ち向かうのか。若者向けに社会問題を発信する「時事ユーチューバー」のたかまつななさん(27)は「個別の政策も重要だが、少子化の根本的な解決策が見えてこない。低収入のため、将来への不安から出産をためらう若い世代も多い。安心して産めるよう首相は目指す国家像を示してほしい」と話す。

◆自助の強調、女性に負担?

 菅内閣の女性閣僚は20人中2人。女性議員増を目指して活動を続ける市民グループ「クオータ制を推進する会」役員の平松昌子氏(87)は「女性の力を生かそうとする世界の潮流と逆をいっている。国民の半分は女性なのに、この比率でいいのか」と疑問視する。
 背景には、女性議員がなかなか増えない現実がある。衆院議員の女性比率は9・9%で、03年の小泉政権時に定められた「20年までに指導的地位に占める女性の割合30%」との目標には程遠い。
 上智大の三浦まり教授(政治学)は、女性議員が増えないことの影響について「選択的夫婦別姓、ひとり親支援など、女性が求める政策が後回しになり、いつまでも実現しない。女性議員が増えれば自民党も変わる」と指摘。「首相は自助を強調するが、公助がないと子どもを産み育て、働き続けることは不可能。女性に負担が押し付けられるのではないか」と語った。

◆首相は待機児童対応をアピール

 菅義偉首相は自民党総裁選中に「待機児童問題に終止符を打つ」と宣言。「保育所、幼稚園の定員を大幅に増やす」とアピールした。加藤勝信官房長官も23日の記者会見で「女性活躍の推進は菅内閣で重要な課題の1つ」と強調した。
 首相は就任後、閣僚を個別に呼び、自らが力を入れる政策について次々と指示。23日は坂本哲志少子化対策担当相と会った。これに先立つ21日には、杉山産婦人科の杉山力一理事長と面会。不妊治療の保険適用拡大の実現に向けた布石とみられる。
 一方、女性活躍全般を担当する橋本聖子五輪相は、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との電話会談に同席させたのが確認されたのにとどまっている。

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