日航機事故後の家族描く 遺族の絵本、地元高校生ら英訳作業

2019年7月31日 02時00分

絵本作りの資料を手に、高校生に語りかける谷口真知子さん=大阪府箕面市で

 1985年の日航ジャンボ機墜落事故で夫を亡くした大阪府箕面(みのお)市の谷口真知子さん(71)が、事故後の家族を題材に描いた絵本「パパの柿の木」の英訳を地元の高校生と進めている。「事故で多くの人が亡くなり、まだ苦しんでいる家族がいることを世界の人に知ってほしい」。来年以降米国での出版を目指す。
 「どんなに苦しいときも、パパが柿の木から見守ってくれるというイメージで描きました」。六月下旬、箕面市の関西学院千里国際高等部で、谷口さんは高一と高三の生徒七人に語り掛けた。真剣なまなざしで聞いていた奥村茉那(まな)さん(17)は、「突然大切な人を亡くす気持ちを初めて知った」と涙ぐんだ。
 谷口さんが絵本を出版したのは二〇一六年。子煩悩な夫正勝さん=当時(40)=が事故前に自宅の庭に植えた柿の木の成長を通じ、当時十三歳と九歳だった息子が長い時間をかけて悲しみから立ち直る姿を描いた。正勝さんは墜落機の機内で、紙袋に「子供よろしく」と書き残していた。

谷口さんが出版した絵本「パパの柿の木」

 絵本は反響を呼び、小学校や幼稚園で読み聞かせをするように。事故機が米ボーイング製だったこともあり、英訳して海外で出版したいと考えていた。そこに、昨年道徳の授業に招かれた千里国際中等部の井藤真由美校長が「高等部の翻訳の授業で、教材として使いたい」と申し出た。
 絵本のテーマ曲として歌手の北川たつやさん(34)と一八年に作った歌「茜(あかね)空」と合わせ、今年四月から週三回、翻訳に取り組む。時折顔を出す谷口さんと北川さんに「アメリカで柿はあまり知られていないと思う。読者にわかるか」「(歌の歌詞にある)『いつもと変わらぬ朝』とはどんな場面か」と質問しながら、慎重に訳していく。
 参加する上原礼さん(17)は「事故は初めて知った。人が一人いなくなることがどれだけ大きいことか、絵本を通じて伝えたい」と意気込んだ。
 十一月末までに完成させ、来年八月の慰霊登山までに米国で出版する考えだ。谷口さんは「事故を身近に感じ、若い感性で真剣に訳してくれてうれしい。世界中の飛行機に関わる人に読んでほしい」と語った。

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