感染防止策検証の場は? 競技関係者ら不安<五輪まで300日>

2020年9月26日 05時50分
 
 新型コロナウイルスの影響で、来夏に延期された東京五輪の開幕まで26日で300日。スポーツ界では、国内外で少しずつ大会が再開されてきた。五輪開催に向けたシミュレーションとなるのが国際大会だ。海外から選手を受け入れ、感染を防ぎながら運営し、浮かび上がった課題をどう五輪につなげるか。だが、日本で開催される国際大会は少なく、競技団体関係者からは「行動制限や感染防止など検証できる場がない」と不安の声が聞こえてくる。(森合正範、磯部旭弘)
 テニスでは、8月末から2週間にわたって全米オープンが行われ、女子シングルスの大坂なおみ(日清食品)が2度目の優勝を果たした。トライアスロンでも世界選手権が9月5、6日にドイツのハンブルクで、30カ国・地域以上の選手が出場して開催された。スポーツが日常を取り戻しつつある。

トライアスロンの世界選手権、混合リレーで優勝し、マスク姿で表彰台に立つフランスのメンバー=AP・共同

 10月以降、さらに再開の動きは加速する。競泳の賞金大会、国際リーグがブダペストで10~11月に。卓球は男女のワールドカップ(W杯)などが11月に中国、マカオで実施される。
 国内に目を向けると、入国を原則拒否している国・地域の選手らもウイルス検査や感染防止対策を条件に、特例で受け入れる方針が確認された。国際大会で試行し、来夏の本番で適用する方向だ。
 貴重な試行の場となるはずだった柔道のグランドスラム(GS)東京大会。12月に予定していたが、今月18日、全日本柔道連盟(全柔連)の山下泰裕会長と国際柔道連盟(IJF)のビゼール会長が電話会議を開き、集団感染が発生すれば五輪開催も危ぶまれるとして開催を断念した。
 山下会長は「最初は残念だったが、電話を切って2、3分したらホッとした」と本音も。「(他国で開催予定の)他の大会と東京では五輪に与える影響があまりに違う」と説明した。前日には、大会組織委員会の森喜朗会長も「慎重にやらないと」と開催に心配の声を上げていた。
 日本は欧米と比べて国際大会の再開は遅れ、年内は11月に東京で体操の国際大会を開く構想があるだけ。日本オリンピック委員会(JOC)の幹部は「国際大会は大きな課題。テニスなど海外で成功例がある。具体的にやっておかないと不安がある」と漏らす。
 同幹部は「本来なら各競技ができるだけ国際大会を開き、収穫と課題を洗い出せばいい。本番でどのような状況が起こりうるか、確認することが大切」と話す。だが、コロナ禍では「失敗できない雰囲気がある。もし集団感染や不手際があれば、国内外で五輪中止の声が上がる。だから、より慎重になってしまう」。成功なら五輪の機運が高まり、失敗すれば悪影響を及ぼす。日本での国際大会は「もろ刃の剣」になっている。
 東京五輪は33競技、200を超える国・地域から、選手だけで約1万1000人の参加が見込まれる。海外での国際大会の事例を参考に、来春のテスト大会、本番へとどうつなげていくのか。選手の行動ルールや感染が確認された選手の対応など、シミュレーションできる舞台は少ない。

◆海外大会では隔離エリア「バブル」で選手ら生活

 新型コロナウイルス対策で参考になるのが約55カ国から参加したテニスの全米オープンなどだ。選手ら関係者は外部との接触を遮断する隔離エリア「バブル」と呼ばれる環境で生活した。
 車いすの部男子シングルスを制した国枝慎吾(ユニクロ)は「バブルの形成で、コロナにびくびくしながら過ごすのではなく、いつも通り集中力を持って試合に入れた」と振り返った。
 バブルを出るには許可証が必要で、国枝は「ホテル外は散歩できない。これ以上外に出ると失格という立て看板があったり、監視員もいた」と話す。
 選手らは到着後すぐにPCR検査を受け、ホテルで待機。陰性と確認された場合に限り会場入りが許された。さらに、48時間以内に2度目の検査。その後は4日に一度検査した。陽性なら棄権となる。主催者によると、大会を通じて6500件以上の検査が実施され、陰性率は99.97%だった。
 マスク着用に加え、個々に空けるべき6フィート(約180センチ)の間隔、手洗いなどの規定もあった。全米オープンのガイドラインは、大会組織委員会やJOCにも情報提供された。
 東京五輪でのバブルの形成について、2009年に新型インフルエンザ対策に当たった高橋和郎・国際医療福祉大教授は「ものすごい人数になるので綿密に計画しないといけないが、かなり大変だろう」と慎重な見方を示す。「日本が方策を提案してもワクチンがない状態で各国が選手団を出すだろうか」とワクチンの重要性も指摘する。

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