サクラソウ自生地、次の100年 さいたま・桜の「田島ケ原」 天然記念物指定100年で記念誌

2020年9月26日 07時29分

100周年記念誌を刊行した福島一之さん=さいたま市で

 さいたま市桜区の「田島ケ原サクラソウ自生地」が天然記念物に指定されてから今年で100年。自生地を見守り続けてきた市民がこれまでの経緯や定時観測の記録、激減する株数など課題についてまとめた記念誌を今月、刊行した。自ら撮りためた植物や昆虫、野鳥などの豊富な写真をはじめ、記念誌には都市近郊に残る貴重な「里地」の魅力が詰まっている。(田口透)
 「ビオ・荒川さいたま」代表で同市南区の福島一之さん(78)がまとめた「特別天然記念物 田島ケ原サクラソウ自生地 さらなる100年に向かって」(関東図書刊)。
 「自生地を守る会」会員としても長年見守ってきた福島さんは、根本的な保全が進まない中、株数がピーク時の20%にまで激減してしまった現状を危惧。「消滅を食い止めるためには、多くの人にサクラソウに興味を持ってもらうしかない」と節目となる今年、記念誌刊行を思い立った。
 二月には公益財団法人「サイサン環境保全基金」に助成金を申請、出版社の協力も得て刊行にこぎ着けた。文章、写真、レイアウトなどは自らデジタルデータ化し、推敲(すいこう)を重ねた。豊富な写真はすべて、福島さんが自生地に通い詰めて撮りためたもの。二十四節気ごとの定時観測の形で、自生地の年々の姿を伝えている。
 自生地に関する書物は、一九九〇年に旧浦和市教委が「天然記念物指定七十周年記念論文集」を写真図版付き上製本として刊行したが、その後、記念誌などは計画されていない。
 福島さんは「サクラソウの開花は春の一時期だが、自生地そのものが天然記念物。一年を通して植物や野鳥、昆虫などが豊かな『里地』の魅力を伝えたかった」と狙いを話す。
 サクラソウなど湿性植物を守ってきた湿地の自生地に対し、それを取り囲む桜草公園は公園緑地として乾燥化が進められている。保全のためには相反する状況の見直しなどが必要だが、現状では縦割り行政もネックとなっているという。
 福島さんは「市長が先頭に立って自生地保護を所管するなど積極的に検討してほしい。野生のサクラソウにとって自生地は最後のとりで。次の百年に向けて保護を進めてほしい」と訴えた。記念誌は二百五十部作製、市内の学校や図書館などに寄贈される。 
<田島ケ原サクラソウ自生地> 盗掘や開発などによる消滅を恐れた地元有志や学者の働き掛けで1920年7月17日、自生地が第1回天然記念物に指定。52年には特別天然記念物に格上げされた。自生地は4.1ヘクタールで2003年のピーク時には234万株を数えたが年々減少。14年には100万株を下回り、今年はついに50万株を切り、47万株にまで落ち込んだ。自生地では3月下旬から4月中旬に淡い紅色の花を咲かせ、県花、市花、桜区の区花としても親しまれている。

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