足尾銅山と自然の再生 変遷描き40年 草加の画家が作品集

2020年9月26日 07時33分

足尾銅山の風景を描いた作品集を手にする鈴木さん=埼玉県草加市で

 近代日本の経済発展を支えた一方、鉱毒事件で「公害の原点」ともされる足尾銅山(栃木県日光市)。その姿を四十年以上、描き続ける埼玉県草加市の画家鈴木喜美子さん(77)が、画業をまとめた作品集を初刊行した。荒涼とした山肌や工場跡の風景が、自然の再生によって少しずつ色彩を帯びていく歩みを記録した一冊だ。(近藤統義)
 鈴木さんが「足尾」と出合ったのは、スケッチ旅行の帰りに立ち寄った一九七八年。むき出しになった茶褐色の岩肌に、西日が差し込む景色に強い衝撃を受けた。それ以来、ほぼ毎月通い、夢中で絵筆を執った。
 当初は相次いで両親を亡くした虚無感から、雪景色などモノクロ調の作品が中心だった。それが九〇年代に入り、住民らの植林事業で緑が増えていくのと同時に、心情も変化。「足尾が私の心を解放してくれた」と、暖色を加えて表現できるようになった。
 これまでに百点以上を描き上げ、二〇一六年には自宅脇に私設美術館「ミュゼ環 鈴木喜美子記念館」を開設し、大作を展示している。作品集には昨年までに発表した約八十点の油彩などを収録した。
 今年八月、コロナ禍による外出自粛を経て四カ月ぶりに足尾を訪問。青々とした夏山に新たな感動を覚えたという。「『自然への回帰』という、次に展開していくテーマがふっと湧いてきた。また足尾に取りつかれてしまった」と笑い、新作の制作に取りかかる。
 刊行を記念し、二十八日〜十月四日には東京・銀座の東京銀座画廊・美術館五階で「『足尾』−風土円環 鈴木喜美子展」を開く。入場無料。作品集は同会場のほか、「ミュゼ環」で五千八百円で購入できる。
 鈴木さんは「自然の再生は喜ばしいが、環境を壊してまた元に戻そうとするのは傲慢(ごうまん)でもある。でも、それが人間の性(さが)とも言え、こうした矛盾を作品の背景に感じてほしい」と話している。問い合わせは、ミュゼ環=電048(960)0388=へ。

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