コロナで中国の鉄路輸送が急増 対米関係悪化で欧州との連携強化

2020年9月28日 05時55分

中国浙江省義烏の駅で、英ロンドンへの出発を待つ貨物列車=2016年12月31日(新華社・共同)

 中国の内陸の都市とスペインなど欧州各国を結ぶ貨物列車「中欧班列ちゅうおうはんれつ」の輸送量が急増している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国制限や景気減速で航空や海運が停滞しているのを横目に、今年上半期は前年比36%増と過去最高の輸送量を達成した。米中対立が進む中、中国政府には広域経済圏構想「一帯一路」の陸路の要を通じ、欧州との経済的な結び付きを強めたい思惑もある。中欧班列の起点となる町で、活況の背景を探った。(中国浙江せっこう義烏ぎう市で、白山泉)

◆「海運より早く、空路より安い」

 「海運より早く、空路より安い。鉄路は第3の輸送方法だ」。中欧班列の始発駅がある浙江省義烏市の中心部で、スペイン産ワインの専門店の販売担当者張叡智ちょうえいちさん(36)は語った。

スペインワインの輸入業者の張叡智さん=浙江省義烏市で(白山泉撮影)

 張さんの店は、食品や日用品を扱う約7万5000店の貿易商が集まる世界最大の卸売市場「中国小商品卸売市場」の中にある。商品のワインは従来、船で運んでいたが、鉄路に変えたことで「在庫が減り、経費削減につながった」。スペインから中国へワインを運ぶ際、海運輸送では45日間がかかったが、鉄路は16日で済む。輸送コストも空路の4分の1だ。
 空路はスマートフォンなど付加価値が高い工業製品を運ぶのには優れている。しかし安価な食品や日用品の輸送となるとコストが見合わない。「鮮度が重要な農産品や食品は鉄路に優位性がある。欧州の中小企業が中国市場に販路を広げる助けにもなる」。上海国際経済交流センターの徐明棋じょめいき副理事長はこう説明する。
 実際、市場には「一帯一路」の沿線国からの輸入品を取りそろえた店が並ぶ。中欧班列は現代のシルクロードと称される。

◆コロナ禍で滞る空・海運の代替手段に

 「中欧班列は鋼鉄のラクダだ」。中国外務省の報道官は、新型コロナで社会のありようが変容した中でも輸送量を増やす鉄路の強靱きょうじんさを説いた。コロナ禍で各国が空路や海運での入国制限を強める中、その代替手段としての利便性も認識された。「義新欧貿易サービスグループ」ブランド責任者の劉明さん(39)は「(鉄路では)交代の際に運転士は直接顔を合わせない。沿線各国も十分なコロナ対策を実施している」と衛生面の利点も強調した。

「中国小商品卸売市場」、一帯一路の沿線国などからの輸入品を集めた区画=浙江省義烏市で、白山泉撮影

 中国共産党機関紙の人民日報は8月中旬、「中国と欧州の連携が世界経済の回復をけん引する」とする記事を大きく掲載。政府は新路線の開拓で、欧州や一帯一路の沿線国との貿易を強化する方針も示している。
 こうした中、王毅国務委員兼外相は8月下旬から8日間、仏独など欧州5カ国を歴訪した。米中対立が長期化する中、欧州でも香港やウイグル族などへの人権問題に対する中国への批判は強まっている。一帯一路の「背骨」をなす中欧班列には、ユーラシア大陸との経済的な結びつきを強めることで、財政力が弱い南欧諸国などを味方に付けたい中国政府の狙いも浮かぶ。

 中欧班列 中国と欧州を結ぶ貨物列車。2011年に中国・重慶とドイツ・デュイスブルクをつなぐ路線が運行を開始。その後、路線や本数を拡大した。中国・浙江省義烏市とスペイン・マドリードを結ぶ路線の総延長距離は約1万3000キロ。新疆ウイグル自治区からカザフスタンを抜け、ロシアやドイツも経由する。

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