PCR検査、民間活用で2000円も 高齢者施設などのクラスター予防も期待

2020年9月28日 06時00分
 新型コロナウイルスで重症化するリスクが高い高齢者や障害者の施設で感染拡大を防ぐため、自治体や施設が民間検査機関と直接契約し、平時から入所者や職員のPCR検査を行う動きが広がっている。2万~3万円とされる医療機関を通じた通常の検査より安価で、施設の新たなクラスター(感染者集団)発生防止策として注目される。都も費用の支援に乗り出した。(岡本太)

唾液によるPCR検査で、新型コロナウイルスの感染の有無を調べる民間検査機関のスタッフ=千葉県市川市で


◆割安で繰り返し検査も可能に

 「1回6000円。この価格だからこそ、繰り返し検査ができる」。東京都墨田区保健所の西塚至所長は施設への検査について、こう力を込めた。
 墨田区の検査は、区内の有料老人ホームや高齢者・障害者グループホームの入所者、職員ら約3000人が対象。入所者らが月1回、自ら唾液を採取し、検査機関に持ち込む。陽性判定が出た場合は、オンラインで医師の診断を受ける。10月にも検査を始める予定だ。
 施設などが自主的に、症状がない人を調べる検査は「スクリーニング」(ふるい分け)と呼ばれる。陽性者をあぶり出すことができるが、結果が陰性でもその後に感染する可能性などがあり、一度きりでは不十分。有効性を高めるには頻繁な検査が不可欠とされる。
 ただ健康保険の対象にはならず、全額が自己負担。医療機関を通じて行うと1回2万円以上かかり、複数回の検査は高額費用がネックとなる。

 唾液によるPCR検査 医師が鼻や喉に綿棒を入れて細胞をぬぐい取る検査に比べて手軽で、くしゃみなどによる周囲への飛沫感染の危険もないとされる。厚労省は「(他の検査と)高い一致率を確認できる」との見解を示している。一方、採取前に飲食や歯磨きをしていると正しく結果が出ないなど注意点も多い。高齢者施設などでは、うまく唾液を出せなかったり、時間がかかったりする人もいるため、採用が難しいケースも想定される。

◆都は費用支援へ

 墨田区は、独自に民間のPCR検査機関を誘致。一般的な検査機関は新型コロナ以外のウイルスや細菌も検査するが、新型コロナに特化して機器類の投資を抑え、1回6000円での検査を可能にした。費用は公費でまかなう。西塚所長は「民間検査機関の協力がなければ難しかった」と話す。
 千代田区は7月、区内の介護施設など7施設で新規入所者への検査を始めた。8月には施設職員約430人を対象に、3カ月に1度のスクリーニング検査を開始。検査は墨田区同様に民間検査機関へ委託し、費用は1回1万3000円ほど。
 都は今後、都内の高齢者・障害者施設が、入所者や職員にPCR検査を実施する場合、全額を補助する。対象は最大約15万人。施設側には、検査を実施している民間検査機関のリストを配り、参考にしてもらうという。

◆ソフトバンクG、いずれは携帯ショップで受け付けも

 民間検査機関によるPCR検査の料金は、検査方法などによって数千円から2万円程度と幅広い。中には、1回2000円から受けられるものもある。
 今夏から検査事業を手掛けてきたソフトバンクグループは24日から、自治体や企業を対象に受け付けを開始。医師の診察など医療行為は一切行わず、検査のみを行うことで料金を1回2000円とした。1日あたりの検査数は最大4000件程度。今秋中に約1万件に拡大するという。
 医師の診察などを受けないため、陽性の確定診断や陰性証明書の発行はできない。また行政検査などと同様、感染していても陰性と出る可能性はあり、結果の扱いに注意が必要となる。
 孫正義会長は同日の発表で「多くの人が自宅や店、職場で、安価に検査を受けてもらえる。個人向けの検査も近いうちに用意していきたい」と述べ、ソフトバンクショップで検査を受け付ける構想も明らかにした。
 民間企業では、ほかにも島津製作所(京都市)が検査事業に乗り出すなどの動きがみられる。
 検査の間口が広がることには、施設関係者も期待する。都内で数十人規模のクラスターを出した福祉施設の責任者は「感染が広がる様子は恐怖だった」と振り返り、「施設での感染は命に関わる。すべての施設が繰り返し検査できるような仕組みをつくってほしい」と話した。

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