ジョブ型雇用、経団連は導入前向きだが人材育成仕組み不十分

2020年9月28日 06時00分
 ジョブ型雇用の導入、すなわち日本型雇用の見直しは、経団連にとって4半世紀来の「悲願」といえる。年功賃金や終身雇用が柱の日本型雇用が、バブル崩壊後から続く経済の長期停滞の主因とみているからだ。だが雇用制度さえ変えれば経済成長が実現するはずもない。「従業員の再教育の仕組みなど経団連は改革のための環境をもっと整えるべきだ」との指摘は多い。(久原穏)

 「終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている」。経団連の中西宏明会長は昨年5月の記者会見で、日本型雇用の見直しは待ったなしだと訴えた。
 今年1月には日本型雇用の見直しのために、春闘に臨む経営側の指針に「ジョブ型雇用の導入を」と踏み込み、雇用改革を一気に進める姿勢を示した。

 日本の解雇規制 解雇は働く人への影響が大きいため、経営不振など会社の都合で人を減らす「整理解雇」には厳格な歯止めがある。判例の積み重ねによって確立された4要件(①本当に人を減らす必要があるか  ②配置転換などで対応する余地はないか ③人選に客観性、合理性があるか ④労使の話し合いなどをしたか)を満たさないと無効とされる。

 急速に高まったかのようなジョブ型導入論だが、実は4半世紀前の「リストラマニュアル」と呼ばれる報告書に源流がある。
 1995年に日経連(2002年から日本経団連に改組)が発表した「新時代の『日本型経営』―挑戦すべき方向とその具体策」。要点は、従業員を ①企業の中枢を占める従来型正社員 ②いつでも雇用を打ち切れる非正規 ③同じく雇用保障が弱い高度専門職―の3グループに分け、人件費抑制が急務だと指南した。
 これを受け、多くの企業が一斉に派遣労働を拡大させたため、リストラマニュアルの異名がついたが、この③こそが「まさにジョブ型雇用だった」と、日本総研の山田久副理事長は指摘する。
 以来、報告書の雇用改革案は財界で脈々と受け継がれてきた。だが非正規労働が瞬く間に雇用者の4割までに広まった一方で、③のジョブ型雇用の導入はなかなか進まなかった。
 山田氏は「この間、経団連は労働界などと協議して、従業員の再教育システムや学生向けの職業教育など人材育成の仕組みを進めるべきだった。時間はたっぷりあったはずだ」と手厳しい。
 日本労働弁護団の水野英樹弁護士は「ジョブ型雇用には『時間でなく成果で評価する』などと誤った解釈が横行している。人件費を削減したいがための導入と感じられ、かつての成果主義ブームのように失敗に終わるのでは」と予想した。

関連キーワード

PR情報

経済の最新ニュース

記事一覧