入管法改正検討 人権軽視の姿勢改めよ

2020年9月28日 07時11分
 国外退去を拒む外国人の長期収容を解消するため、政府は入管難民法の改正を検討している。退去拒否への刑罰導入や難民申請中の送還の一部容認が柱だが、ともに人権軽視のそしりを免れない。
 きっかけは昨年六月、収容施設に三年七カ月も収容されていたナイジェリア人男性がハンストで餓死した事件だ。事件後、法相の私的懇談会が専門部会で長期収容の解消策を議論。それを基に懇談会は七月、法相に改正案の骨子となる提言書を提出した。
 ポイントは二つある。一つは退去命令を拒んだり、収容を一時的に解く仮放免中に出頭しない場合の刑罰の導入。もう一つは難民認定申請中は送還を停止するという規定に例外を設けることだ。
 いずれも「ムチ」優先の考え方で、長期収容の原因を十分に考慮した結論とは思えない。退去対象者の大半は出国している。拒んでいるのは仮放免者を含む約二千八百人(昨年末時点)で、多くは母国で迫害の危険があったり、日本に家族や生活基盤がある人だ。
 以前は在留特別許可などが比較的柔軟に与えられていたが、約五年前から収容政策が厳格化され、収容の長期化を招いている。
 さらなる厳格化で問題が解消されるのか。答えは否だろう。拒否者には日本で生まれ育ち、母国語が話せない人もいる。刑罰が導入されれば、収容施設と刑務所の往復という状況に陥りかねない。
 しかも生活を援助する人までが共犯に問われる危険も浮かぶ。半年以上の収容が見込まれる難民認定申請者に弁護士ら民間の監理(かんり)人を付け、収容を控えるという「監理措置(仮称)」構想も仮釈放の厳格化でしかない。
 一部の難民認定申請者の送還容認に至っては論外だ。問題の本質は「難民鎖国」と呼ばれる日本の難民認定率の低さにある。数十%の欧米に比べ、日本はわずか0・4%。未認定で在留を許す「準難民」制度も検討中だが、なぜ難民認定しないのか。日本は難民条約の締結国であり、迫害の恐れのある人の送還は国際法上の原則に反する。
 政府は一九八〇年代には不法滞在を黙認し「3K(きつい、汚い、危険)職場」に多くの外国人を誘導した。そうした人びとが日本で生活基盤を築いてきた経緯を忘れてはならない。
 いまや介護や農業分野では外国人の働き手が不可欠だ。こうした人びとが人権に疎い国を訪れるだろうか。厳罰化より人権を重んじる入管行政の改革こそが必要だ。

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