IOC、東京五輪開催に自信も 選手は試合遠ざかり鈍る勘

2020年9月29日 06時00分
<アスリートの現在地(上)>
 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は9月22日、「オリンピズム(五輪の精神)とコロナ」と題した書簡を公開した。
 「スポーツはパンデミック(世界的大流行)と闘う上で不可欠な要素だと広く認識されている。制限下でも大会を安全に組織できることが分かってきた。このことは五輪を含む今後の大会準備に自信を与えてくれるはずだ」
 来夏の五輪開催の可否について、はっきりした発言をしてこなかったバッハ氏が、ここへきて突然、開催へ自信を示した。
 その同じ日。国際柔道連盟は新型コロナウイルス感染の危険性を考慮し、グランドスラム(GS)東京(12月11~13日)の中止を発表した。五輪への機運を高め、選手らの受け入れや運営面での試金石とみられていた大会だった。
 全日本柔道連盟(全柔連)の山下泰裕会長は「アスリートを守る意味ではやむを得ない」とコンタクト競技の難しさを吐露した。前のめりになるIOCと、開催都市で国際大会が断念されたという事実。理想と現実の間に大きな隔たりがあった。
 GS東京の中止は出場を予定していた日本代表選手に影響を与える。全柔連の金野潤強化委員長は言う。「(日本代表は)ここから国際大会をスタートしたいと考えていたので残念」。国内では10月31日、11月1日に講道館杯が行われるが、調整を1カ月半前倒しするのは難しく、柔道では対策や研究にさらされる国内大会を嫌う傾向が強い。
 金野強化委員長は「試合がない異常事態」と語り、「試合勘を取り戻すために(国内大会に)出るか。思惑を考えながら回避するか。いろんな考え方がある」。五輪への道筋はなかなか見えてこない。

合同練習で高校生と組み合う大野将兵 (右)=19日、三重県名張市

 東京五輪で連覇を目指す男子73キロ級の大野将平(旭化成)は9月中旬、三重県内で高校生の合同練習に参加。先が見通せない中、試合で畳に立つことを求めつつ、立ち止まらずに稽古を積んでいる。
 コンタクトスポーツとともに、減量のある競技も試練の時を迎えている。重量挙げの有力選手は昨年12月を最後に大会に出場していない。日本協会の小宮山哲雄専務理事は「試合間隔がこれほど空くと調整が大変」と受け止める。
 選手は定期的に減量して試合をすることによって、体重と体に合った筋肉を維持している。減量をせずにトレーニングばかりしていると、筋肉がつきすぎるという。小宮山専務理事は「1年間試合をしていないと減量した時に筋肉がつったりする。水分を抜いた時にどうなるか。減量がある競技はみんなそうじゃないか」。不安を抱えながらも、練習に励むしかない。
 試合から遠ざかる選手たち。調整は難しく、実戦感覚も鈍る。東京五輪が開催されるのかさえ分からず、もどかしい日々を過ごしている。
                ◇
 来夏に延期された東京五輪は開幕まで300日を切った。選手や競技の現状、コロナ禍におけるスポーツの形を3回に分けて掲載する。
(この連載は磯部旭弘、森合正範が担当します)

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