北海道で野生のラッコ増える 陸から見られる注目スポット 漁師との共生に課題も 

2020年9月29日 12時06分

北海道浜中町の霧多布岬周辺で撮影されたラッコの親子=2月(片岡義広さん提供)

 北海道浜中町の霧多布きりたっぷ岬周辺で野生のラッコが繁殖し、年間通してかわいらしい姿を陸上から観察できる希少な場所として注目を集めている。ラッコは国際取引の規制や高齢化のため日本の水族館では消滅の危機を迎えているだけに、全国から見物客を呼び込める新たな「観光の目玉」として期待が高まっている。
 「ぜひまた来たい」。8月中旬、夕方に岬を訪れた神奈川県の会社員石塚総さん(53)は、頭を出して泳いでいたラッコが姿を消した岩陰を興奮した様子で眺めていた。

北海道浜中町の霧多布岬周辺で撮影されたラッコの親子=5月(片岡義広さん提供)


◆観光業界は歓迎

 ラッコの繁殖に観光業界からは歓迎の声が上がる。浜中町の川村旅館の担当者によると「最近、一眼カメラを持ってラッコを撮影しにくる客が増えた」という。東北海道トラベル北見本店の湯本勝也営業統括部長は「厚岸のカキを食べ、霧多布岬にラッコを見に立ち寄るなど、魅力的な旅行プランの提案を検討したい」と声を弾ませた。
 岬周辺のラッコの写真集を出した片岡義広さん(72)は、北方領土のラッコが生息域を広げ、浜中町で目撃されるようになったと推測する。
 2017年は雌2匹、雄1匹が確認された。新たな雄も加わり、19年までに赤ちゃん4匹が誕生。成獣に育ったのは1匹だけだが、今年4月には5匹目が生まれた。片岡さんは「子どもが父親以外の雄にかみ殺されることもあり繁殖は簡単ではない。何とか子孫を増やしてほしい」と願う。

◆水族館に6匹だけ

 ラッコは毛皮目当ての乱獲で野生の生息数が減少したため取引が規制されており、国内の水族館でも珍しい存在になっている。日本動物園水族館協会(東京)によるとピーク時の1994年には28施設に122匹がいたが、現在は鳥羽水族館(三重県)や須磨海浜水族園(兵庫県)などのわずか6匹。
 協会の岡田尚憲事務局長は襟裳岬で漁業被害が出て、環境省が捕獲されたゼニガタアザラシを2016年以降に各地の水族館に譲渡したのを例に「ラッコが増えて捕獲されるようになれば、水族館で受け入れられるかもしれない」と話す。

◆ウニ漁への影響に不安の声も

 霧多布岬で順調に繁殖が続いた場合、漁業との共生が将来的な課題だ。ラッコは大量の魚介類を食べるため、ウニ漁が盛んな地元では「大きな漁業被害が出ないか不安」(浜中漁協関係者)との声も上がっている。
 現在は目立った被害はなく、浜中町の担当者は「漁師との共存も考えながら、観光資源としての活用を模索していきたい」と強調した。(共同)

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