「ゴーン元会長、未払い報酬あった」司法取引した元秘書室長が初の証人尋問

2020年9月30日 06時00分

29日、レバノンの首都ベイルート郊外で教育支援について記者会見する元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告(中央)=共同

 日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(66)の役員報酬を過少に有価証券報告書に記載したとして、金融商品取引法違反罪に問われた元代表取締役グレゴリー・ケリー被告(64)と日産の東京地裁での公判で29日、検察と司法取引した大沼敏明元秘書室長(61)の初の証人尋問が行われた。ゴーン元会長の報酬について「未払いの報酬の開示を避けて、どのように支払うかをケリー被告と検討してきた」と証言した。

◆元代表取締役ケリー被告と「支払い方法検討」

 ゴーン元会長が2018年3月期までの8年間の報酬として記載しなかった計約91億円が、記載が必要となる未払い報酬に当たるかが最大の争点。ケリー被告は「犯罪の共謀に関与していない」などと無罪を主張している。
 大沼氏は「元会長の報酬の決定や支払いに関わった。確定した報酬、支払った報酬、未払いの報酬があった」とした上で、ゴーン元会長の未払い報酬を支払う複数の方法を、ケリー被告と検討したと述べた。
 証言によると、役員報酬の開示制度が導入される見通しとなった10年2月、ケリー被告はゴーン元会長の報酬の開示額について「日本人感覚でいくらがいいと思う」と尋ね、大沼氏は10億円以下が妥当と提言。16億円と決まっていた09年度の元会長の報酬のうち7億円を一時的に日産に返し、翌年度の支払いに回す案などを検討するよう、ケリー被告から指示を受けたという。
 起訴状によると、ケリー被告はゴーン元会長と共謀し、11年3月期~18年3月期の元会長の報酬が計約170億円だったのに、既払いの計約79億円だけを記載したとされる。
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◆司法取引で検察に沿う証言も 「信用性の判断慎重に」

 検察との司法取引で起訴されないことが約束されている大沼氏は、29日の証人尋問で検察側の主張に沿う内容を証言した。元裁判官の木谷明弁護士は「証言の信用性は慎重に判断しなければならない」と指摘する。
 司法取引は2018年6月に導入され、東京地検特捜部が扱った少なくとも3件の事件で適用されたが、取引に応じた当事者個人の証人出廷は初めて。
 「開示制度を逃れる方法です。法の趣旨に反すると思っていました」。ケリー被告と検討したとされるゴーン元会長への報酬の支払い方法について、大沼氏は検察側の主張通り、違法性の認識があったとした。
 大沼氏は07年9月、秘書室長として元会長ら役員の報酬を管理するようになった。検察側は大沼氏が「毎年度、未払い報酬額を計算し、元会長の確認を受けていた」とする。
 特捜部と司法取引で合意したのは、ゴーン元会長とケリー被告が逮捕される半月前の18年11月1日だ。ノート型パソコンやUSBメモリー、元会長の名前が書かれた書面など80点超の証拠を特捜部に提出。証人尋問で「真実の供述をする」と約束し、「被疑者大沼を起訴しない」との確約を得た。
 刑事訴訟法では、当事者が合意内容に違反した場合、もう一方の当事者は司法取引から離脱できる。ケリー被告の弁護人は初公判で、証言の信用性を慎重に判断するよう地裁に求めた。
 大沼氏の証人尋問は今後、20回以上を予定。木谷弁護士は「自身の保身のため、検察側の意を酌んだ証言をする恐れは拭えない。裁判官は客観証拠に照らして信用性を判断する必要がある」と話す。(山田雄之)

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