携帯値下げに向けNTTグループ効率化 28年ぶり"元サヤ"なぜ?

2020年9月30日 05時55分

NTT本社(左)とNTTドコモの本社が入るビル

 NTTが4兆円余りを投じてNTTドコモを完全子会社化し、民営化後の1992年に分離して以来、28年ぶりの一体運営に回帰する。第5世代(5G)移動通信システムなど成長投資の強化に加え、菅政権がこだわり「国策」となった携帯電話料金の引き下げに対応するのが狙いだ。経営の効率化につながる半面、同業他社からは「肥大化」による競争環境の悪化を懸念する声が上がる。

◆NTTは冷ややか「ドコモは3番手」

 29日、記者会見に臨んだNTTの澤田純社長がドコモに向けたまなざしは、どこか冷ややかだった。ドコモの現状を評して「3番手」との表現を連発。携帯電話の契約回線数で国内トップを維持しているものの、本業のもうけを示す営業利益など利益面の指標ではライバルのKDDI(au)やソフトバンクに劣っている点を強調した。
 完全子会社化と合わせて発表したドコモの社長人事が象徴的だった。吉沢和弘社長は12月1日付で取締役に降格。後任社長にはNTTから送り込んだ井伊基之副社長が就任し、今後は完全親会社となるNTT主導で経営をかじ取りする姿勢を見せつけた。
 会見では記者団から、今回の経営判断と携帯値下げとの関連を問う声が相次いだ。澤田氏、吉沢氏とも「直接はリンクしない」としながらも、経営基盤を強化した結果として値下げが可能になると説明した。他方、完全子会社化でしか解決できない経営課題を問われると「意思決定が迅速になる」と述べるにとどまり、経営体制見直しの大掛かりな手法に比べ、その目的は明快さに欠ける印象が否めなかった。

◆菅政権の意向受け、子会社化と同時に値下げも明言

 完全子会社化は、ドコモなど携帯各社に値下げを求めてきた政府にとっても好都合とみられる。菅政権の発足後、業界を所管する総務省の幹部は「ボールは事業者の側にある」と話し、大手3社の動きを注視していた。
 同省は、電話番号を変更せずに別の携帯会社に乗り換えられる「番号ポータビリティー制度」の利用手数料を原則無料とする方針を決めるなど、値下げに向けた競争促進策にこれまでも取り組んできた。担当職員は「できることは全てやってきた」と漏らすなど、圧力を強める首相官邸と業界のはざまで頭を悩ませていた。
 菅政権誕生の流れが確実になった今月初め以降、ドコモを含む携帯大手3社の株価は下降線をたどった。総務省幹部は「早く対応策を打ち出した方がいいのではないか」と、なかなか値下げの姿勢を示さない業界側にいらだった様子も見せた。
 今回、ドコモは完全子会社化の発表と同時に値下げの意思も明言し、政府の意向を受け入れる流れが明確になった。

◆肥大化避けた流れに逆行 他社は警戒

 ドコモは92年、移動通信事業の担い手としてNTTから分離された後、98年に東京証券取引所第1部に上場。今ではグループの稼ぎ頭だ。
 NTTがドコモを完全子会社として取り込むグループ再編は大きな転換点となるが、分離した当時、NTTの肥大化を避け、対等な業界間競争を促す目的があった。そうした過去のいきさつに逆行するかのようにも映る今回の動きに対し、競合他社は警戒を強める。
 ソフトバンクは「NTTグループ各社の在り方には(市場の支配力が強まりすぎないよう)一定のルールが課せられている。今回の完全子会社化は、電気通信市場における公正競争確保の観点から検証されるべきだ」と早速くぎを刺した。

 NTTグループ  1985年に日本電信電話公社の民営化により誕生した通信大手。政府が筆頭株主である持ち株会社NTTの傘下で、携帯電話など移動通信を手掛けるNTTドコモや地域通信のNTT東日本・西日本、国際通信のNTTコミュニケーションズなどが事業を展開する。稼ぎ頭のNTTドコモは携帯の国内市場の頭打ちを背景に、金融・決済サービスを成長分野と位置付けて注力している。

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