「ウィズ・コロナ」への本音

2020年9月30日 07時58分
 抑え込んでいた気持ちを心からそっと取り出されたような感覚になった。
 シンガー・ソングライターのあいみょんさんが民放の報道番組で、コロナ禍を題材にした歌は書こうとは思わないと話していた。
 「この状況で出てきた言葉には否定的だったりする。一番苦手なのは『ウィズ・コロナ』。声に出したくないし、広がってほしくない」と言う。
 もちろん新しい日常を受け入れる必要性には言及しながらも、そう考える理由はシンプルで素直なものだった。
 「みんなと近づきたいし、会いたいし、ライブがしたい。ウィズ・コロナとか言わんとってという心はずっとあるんです」
 これだけ大きな出来事である。今後、さまざまなアーティストや作家がコロナ禍を作品に取り上げるだろう。社会や人が抱えた困難を作品に結実させる。それも芸術の大切な役割ではある。
 感染症と生きていくには、新しい日常を受け入れて慣れるしかない。それは十分理解している。社説でもその重要性を訴えてきた。それがメディアの役割だとも考える。
 けれども、と思う。人と距離のある生活は正直、しんどい。やはり会って触れて気持ちを共有したい。自分の気持ちに正直な彼女の本音を聞いて、縮こまった背中にそっと手を添えてもらった感じがした。 (鈴木 穣)

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