タカで飛行機事故を防ごう ロシアの空港、鷹匠と安全対策

2020年9月30日 14時00分
 飛行機の墜落事故を防ごうと、モスクワの航空当局が鷹匠とタッグを組んで安全対策を進化させている。狙いは、エンジン停止の原因となる鳥を飛行場から一掃すること。伝統のタカ狩りの手法に犬やITを組み合わせ、効果的な鳥の威嚇手段を追い求めている。(モスクワ・小柳悠志)

◆空港周辺の鳥の巣をなくそう!

モスクワ・ブヌコボ空港近郊で、タカと犬で飛行場の安全を守る鷹匠ドミトリー・ラリンさん=小柳悠志撮影

 「タカの飼育は高くつくが空の安全対策には最適」。モスクワ・ブヌコボ空港で働く鷹匠ドミトリー・ラリンさん(35)はこう力を込める。雌のタカとはいつも一緒。タカのツメから自身の皮膚を守る手袋や餌代で、飼育費は年40万円以上も掛かる。
 鳥は飛行機にとって悩みの種。鳥がぶつかると機体が傷み、時にはエンジンに吸い込まれて航行不能になる。ロシア紙によれば、こうした「バードストライク」のロシアでの発生頻度は米国の2倍以上。航空機の離着陸が多いモスクワは、飛行場の周りで鳥の営巣を防ぐのが差し迫った課題だ。

◆研究は30年以上、犬も協力

 ブヌコボ空港が鳥類研究を始めたのは1980年代。かかしや光を反射するリボン、音響装置で鳥を脅そうとしたが「鳥は賢いのですぐに慣れてしまう」(広報)。鳥たちに強いトラウマ(心的外傷)を与えるため、行き着いたのが猛きん類の利用だった。
 まず飛行場の近くを飛ぶ鳥をタカが襲撃。草むらに潜んでいる鳥には犬をけしかけ、飛び上がったところでタカが捕らえる。仲間の死を目の当たりにすると、鳥たちはおのずと飛行場近くの営巣を避けるという。ブヌコボ空港は2年前に専用アプリも導入。タカに発信機を付け、飛行中の位置把握も簡単になった。

◆5年間、鳥による重大事故はなし

 昨年8月にはタカを使わないモスクワ・ジュコフスキー空港で離陸した旅客機のエンジンに鳥が入り、トウモロコシ畑に胴体着陸する事態もあった。一方、ブヌコボ空港はここ5年間、鳥が原因となる重大事故は起きていないという。ドミトリーさんらは「各国のタカ情報を日ごろから収集している。日本古来のタカ狩りも素晴らしい伝統だ」と語る。

モスクワで2019年8月、バードストライクのためトウモロコシ畑に胴体着陸した旅客機=モスクワ通信社提供

 ロシアの国章は、ビザンチン帝国に由来する「双頭のワシ」で、タカは17世紀から狩りに使ってきた。大統領府のあるモスクワ・クレムリンでもタカを放ち、カラスなどが飛び回らないよう目を光らせている。

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