虐待死児童の実母のDV被害は18.9%、家庭が地域社会から孤立…厚労省専門委が初調査

2020年9月30日 10時57分
 厚生労働省の専門委員会は30日、2007年1月~18年3月に発生・発覚した心中以外の児童虐待死亡事例に関し、家庭内でのドメスティックバイオレンス(DV)の有無に焦点を当てた詳細な分析結果を初めて公表した。検証可能な270人のうち、死亡した児童の実母がDVを受けた経験のあったのは51人(18・9%)。この家庭の地域社会との接触状況を調べると、「乏しい」「ほとんどない」人が38人(74・5%)に上り、虐待とDVの関連性や社会での孤立しやすさが浮き彫りとなった。
 これに対し、DV経験がなかったのは219人(81・1%)で、地域社会との接触状況が「乏しい」「ほとんどない」人は112人(51・2%)だった。
 家庭の親族との接触状況では、DVありが「乏しい」「ほとんどない」人が45・1%、DVなしは29・7%にとどまった。専門委は検証結果報告で「DV加害者により孤立させられやすく、虐待が深刻化している可能性がある。家庭における『支配者』と『被支配者』という関係性を念頭に支援すべきだ」と指摘している。
 10代での妊娠・出産経験の分析では、DVありの人は60・8%、DVなしでは32・0%と差が際立つ。子ども死亡時の実母の年齢も低かった。一方、虐待の通告や児童相談所の関与はDVありの人の方が多く、適切な支援につながっていない状況があるとみられる。
 対象期間の心中以外の死亡事例は587人。このうちDVの有無が不明な298人、未記入19人の計317人が検証不可能で、今回対象とした270人を上回る。虐待に対応する機関がDV情報を十分把握できていない可能性が残る。
 DVと虐待の関連を巡っては、今回の分析対象ではないものの、昨年1月、千葉県野田市の小学4年栗原心愛みあさん=当時(10)=が死亡した虐待事件などで社会問題化。今年4月に施行された改正児童虐待防止法などは、両支援機関の連携強化を明記した。今回の分析は死亡事例の検証結果で特集として報告された。

◆2018年度に73人が死亡 原因は育児放棄が初めて最多に

 厚生労働省の専門委員会が30日発表した児童虐待による死亡事例の検証結果で、2018年度に73人(前年度比8人増)が死亡していたことが分かった。心中を除くと54人(同2人増)で、このうち死因となる主な虐待の類型は、育児放棄(ネグレクト)が25人(同5人増)で初めて最多となった。これまで最も多かった身体的虐待は今回23人(同1人増)だった。
 死亡した子どもの年齢は、0歳が全体の4割に当たる22人となり、例年同様に最多だった。生後0カ月が7人おり、いずれも生まれた日に死亡していた。7人のうち1人を除き、児童相談所や市区町村の虐待対応部署が関与できていなかった。
 妊婦健診未受診だった子どもが12人。「予期しない・計画していない妊娠」による子どもが13人。妊娠期から医療施設や行政機関が連携しケアする「周産期支援」の仕組みの重要性も浮かんだ。
 事例分析では、全体の7割で発生前に児相への通告がなかった。一方、児相が関与した場合でも、定期的なリスクの見直しをしていなかったものが8割に上った。死亡事例を担当した児相職員は年間で平均76件の虐待ケースを受け持っていた。
(共同)

 児童虐待 全国の児童相談所が2018年度に相談・通告を受けた児童虐待件数は約16万件に上り、増加傾向にある。子どもの前で配偶者に暴力を振るう面前DVや暴言などの心理的虐待が全体の半数を超える。子どもへの体罰禁止やDV対応機関との連携強化を明記した改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が昨年6月に成立、一部を除き今年4月に施行された。

 DV(ドメスティックバイオレンス) 配偶者や恋人から振るわれる暴力。身体的な暴行のほか、心理的な攻撃や生活費を渡さない経済的圧迫などがある。内閣府によると、2018年度に配偶者暴力相談支援センターで受理したDV件数は11万4481件で過去最多となった。DV防止法が01年に施行された他、今年10月には、対策強化のため内閣府に「男女間暴力対策課」が新設される。

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