絶え間ない挑発、非難 「史上最悪」のテレビ討論会<米大統領選>

2020年10月1日 05時50分

29日、米オハイオ州クリーブランドで、米大統領選第1回候補者討論会で激しい応酬を繰り広げるトランプ大統領(左)とバイデン前副大統領(右)=AP

 11月の米大統領選まで1カ月余り。共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領による29日のテレビ討論会は、米社会の分断を象徴するかのように双方が挑発や非難を繰り返し、「史上最悪」(米複数メディア)といわれるほど激しい攻防となった。(ワシントン・金杉貴雄、岩田仲弘)

◆不規則発言続けるトランプ氏

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、握手もなく静かに始まった討論会は開始直後から大荒れになった。仕掛けたのはトランプ氏。バイデン氏が大統領選前に新たな最高裁判事を任命すべきではないと主張している間、持ち時間ではないのに不規則発言を続けて妨害した。
 バイデン氏が「黙っていてくれ」と抗議し、司会の保守系FOXニュースキャスター、クリス・ウォレス氏が制止しても、聞く耳を持たない。
 トランプ氏には、あらかじめ用意した攻撃材料に強引に持ち込もうという姿勢も目立った。黒人差別への抗議デモの一部暴徒化を巡り「法と秩序」を強調しないのは、「過激な左派の言いなりだからだ」と主張。バイデン氏が亡くなった長男ボー氏の話をしている時に、唐突に次男ハンター氏に話題をすり替え、同氏が薬物使用で軍を除隊後「ウクライナ企業や中国の事業で報酬を得ていた」との疑惑も取り上げた。

◆バイデン氏と縮まらぬ差に焦り

 トランプ氏がなりふり構わぬ攻撃を仕掛けたのは、選挙最終盤に入り、各州で期日前投票が始まる中、先行を許すバイデン氏との差が縮まらないことへの焦りの裏返しだ。全米の支持率平均ではいまだに6ポイントほどの差をつけられている。かぎを握る中西部など激戦州の多くでもリードされている。
 このため討論会では、バイデン氏が大統領にいかにふさわしくないかを強調する戦略に出た。「過激左派」「家族の疑惑」を持ち出し、否定的印象を強調。失言癖があり高齢のバイデン氏は討論には弱いとみて挑発し、いら立たせることで失敗の誘発を狙った。乱戦はトランプ氏の土俵だ。
 努めて冷静さを保ちつつ、バイデン氏も黙っていない。税額控除を利用して連邦所得税の支払いを免れてきたトランプ氏を「史上最悪の大統領」と批判。人種差別抗議デモで白人至上主義者を批判しないトランプ氏を「うそつきで人種差別主義者だ」とまで酷評した。

◆敗者は口論と妨害見せられた国民

 バイデン氏は攻撃への反論も周到に準備していた。「左派に操られている」とのレッテルには、民主党候補者争いで左派候補に圧勝したとして、自らが主導権を掌握していると強調。憤りを極力抑え、議論の焦点を新型コロナ対策など現職の責任にあてた。終始、トランプ氏ではなくカメラに視線を向け、最後は「この国の次の4年をあなたが決めることができる」と有権者に投票を呼び掛けた。
 討論会の歴史に詳しいミズーリ大のミッチェル・マッキニー教授も「トランプ氏は大統領にふさわしくないスタイルを持ち込み、バイデン氏は失言やつまずきを避けた」とバイデン氏有利との見方を示した。一方で「最大の敗者は、絶え間ない口論と妨害を見させられた米国民だ」と強調。「残り2回、同じパフォーマンスは許されない」と苦言を呈した。

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