「自殺願望」被害者は何を思ったか 「承諾」の有無で対立、座間9人殺害初公判

2020年9月30日 21時18分

神奈川県座間市の9人殺害事件があったアパート=2017年10月

 2017年、神奈川県座間市のアパートで9人を殺害し、遺体を切断、遺棄したとして強盗強制性交殺人罪などに問われた白石隆浩被告(29)の公判が30日、東京地裁立川支部で始まった。インターネットで自殺願望を明かしたとされる若者が次々に犠牲となった事件。被告による殺害を被害者が「承諾」していたかを巡り、検察、弁護側の主張は激しく対立した。

◆検察は「卑劣な単なる殺人」主張

「自殺願望があるような女性なら言いなりにしやすいだろう」。検察側の冒頭陳述によると、白石被告は、「働かずに楽したい」「女性のヒモになりたい」という望みをかなえるため、自殺をほのめかす女性をツイッターで探し始めた。
 1人目の被害者の女性(21)を暴行して殺害後、「この方法なら働かずに金を手に入れられ、性欲も同時に満たせる」と味をしめ、自殺願望をネットに書き込んだとされる女性を次々と自宅アパートへ誘った。そして、「本気で自殺する気もないと判断するや、いきなり首を絞めて暴行した」という。
 証拠調べで検察側は、被告が9人の頭部を保管していた6つのクーラーボックスを示したり、被告が検索した遺体損壊方法のインターネット閲覧履歴などを紹介。犯行態様の残虐性を強調し、欲望の充足を目的とした計画的で卑劣な「単なる殺人」と主張した。

◆被害者の心の内は…乏しい客観証拠

 これに対し、弁護側の冒頭陳述は「1年間で2万5000人です」のひと言で始まった。過去10年間の平均自殺者数だという。この事件の被害者9人も、何らかの理由で不安定な状態となって、死にたいという気持ち「希死念慮きしねんりょ」を抱き、自らの意思で白石被告の元を訪れたと指摘。「白石被告の手で、死の実現が行われることを想定していた」と述べ、法定刑の上限が死刑の殺人罪ではなく、7年以下の懲役または禁錮の承諾殺人罪の適用を求めた。
 ただし、白石被告本人は起訴内容を認めており、弁護人の主張とは大きく食い違う。承諾の有無を示す証拠は、被告の自白やツイッターでのやりとりなど、客観証拠に乏しく、被害者の心の内を知ることもできない。裁判員らは難しい判断を迫られる。
 被害者のうち4人はまだ10代だった。彼女たちの心の隙間に付け込んだ犯行は、承諾殺人か、エゴに基づく「殺人」か。77日に及ぶ長期審理が注目される。(沢田千秋)

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