見つけた! 「狭山丘陵の案内人」がラン新品種 苦節20年の夢

2020年10月2日 07時07分

ラン仲間と狭山丘陵を歩く河村伸雄さん(右)=武蔵村山市で

 ランの新品種を探し、狭山丘陵を歩いて回ること二十年。自称「狭山丘陵の案内人」が新品種とみられるランを発見した。パート従業員、河村伸雄さん(68)=武蔵村山市=が見つけたランが、新品種の可能性が高いと専門家からお墨付きを得た。東京都と埼玉県にまたがる広大な丘陵には「まだ未知の植物があるはずだ」と河村さんは夢を膨らませる。

河村さんが発見した新品種とみられるキバナトサノクロムヨウラン

 「ついに見つけた」
 新品種発見を確信したのは、二〇一八年七月のことだった。自身も知るトサノクロムヨウラン(土佐の黒無葉蘭)なら黒いはずの茎が、途中から黄色くなっているランを見つけた。半年前の二月、冬季に観察できるランの果実を探し歩いていた時、見慣れない形の実があるのに気付いた。場所を覚え、新芽が出る四月ごろから定期的に観察を続け、黄色い茎を確認した。
 知人を介し、在野の植物研究者福永裕一さん(44)=徳島県=や、その共同研究者の沢進一郎・熊本大大学院教授(49)にランを見せ、新品種に「間違いないだろう」と認められた。ランはトサノクロムヨウランの黄色い品種で、色素が欠失したと考えられる。沢教授らが「キバナトサノクロムヨウラン」として、海外の専門誌への論文投稿を準備しており、受理されれば学術的に新種と認められる。

トサノクロムヨウラン(福永裕一さん提供)

 沢教授によると、ランの新品種は国内で年数件見つかる。一般の愛好家が変わったランを見つけ、専門家が論文を書いて新品種と認められるケースも多いという。「愛好家の方々は現地に非常に詳しく、専門家も調査の際に案内を頼むことがある。彼らがいなければ、研究が成り立たない部分もある」と河村さんのような市民の調査活動を評価する。
 河村さんは武蔵村山で生まれ育ち、狭山丘陵は身近な遊び場だった。ランにハマったきっかけは、狭山丘陵のランは十種類ほどと書かれた冊子を手にしたことだった。「そのくらいなら全部を探して自分の目で見るのも簡単だろう」。軽い気持ちで始めたランの観察は気付けばライフワークになっていた。

左から、狭山丘陵で見られるアキザキヤツシロラン、アケボノシュスラン、サイハイラン=いずれも河村さん提供

 冬に「これは希少種か」「ひょっとして新品種か」と思う果実を見つければ、数カ月後に出てきた茎や花を観察。次の冬には、また別の果実が気にかかり…と年月を重ねていった。その結果、たどり着いた新品種。喜びもひとしおだ。「これまで変わったランを報告しても、すべて専門家に『変異個体』と言われ、悔しい思いをしてきたが、やっと認められた」
 河村さんの調査では、現在、狭山丘陵に自生し、毎年見られるランは二十六種類。冊子に書かれた十種どころではなかった。狭山丘陵には野山北・六道山公園など五つの都立公園があり、園路を歩くだけでもキンランやサイハイランなどさまざまなランが見られるという。新品種の発見を機に「多くの人に狭山丘陵の自然の豊かさを知ってもらい、散策を楽しんでほしい」と「案内人」の素顔を見せた。
<狭山丘陵> 武蔵野台地の西部にあり、東西約11キロメートル、南北約4キロメートル、面積約3500ヘクタール。武蔵村山市や東大和市、埼玉県所沢市などにまたがる。雑木林や湿地、水田が広がり、アニメ映画「となりのトトロ」の舞台と言われる。周辺には古代から人が住み、縄文時代の遺跡も発掘されている。
  文と写真・林朋実
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