日本学術会議の任命拒否、どこが問題?

2020年10月3日 05時55分

早大大学院の岡田正則教授

 推薦候補6人が任命を拒否されたのは、現制度になった2004年度以降で初めてだが、どこに問題があるのか。(原田遼)

◆独立性の侵害

 「会議の構成員を勧告を受ける側の政府が左右することは、日本の学術のあり方をゆがめる」。6人のうちの1人で早稲田大大学院の岡田正則教授(行政法)は2日、国会で開かれた野党ヒアリング後、記者団に訴えた。
 会議が独立性を強調するのは、科学が軍事利用された戦前の反省が設立の根底にあるからだ。安全保障関連法に反対してきた岡田氏は自身の排除を「耳の痛い勧告をしそうな学術会議にしないために人事に手を入れてきたのかと思う」と指摘。独立性が失われれば「将来の世代への大変な冒瀆ぼうとく」と憤った。

◆意思決定が不明

 加藤勝信官房長官は会員の選考過程について「コメントは差し控える」としている。ジャーナリストの津田大介さんは「誰がどのように決めたか分からない。決裁文書も議事録も公にならなかった安倍政権から続く意思決定のブラックボックス化だ」と批判した。
 安倍政権は科学研究費の「選択と集中」を進めてきた。「政府の本丸は科学研究費の抑制だろう。科学も学術も時の政権に都合のいい研究ばかりをすると、長期的に国際競争力を低下させてしまう」と憂えた。

◆理由を示さない

 「戦中の宮沢・レーン事件と重なる」と話すのは、東京工業大の中島岳志教授(近代日本思想史)。1941年、外国人の知人が多かった北海道帝国大生がスパイ容疑で逮捕・投獄された事件で、裁判が非公開になるなど具体的な容疑の中身が明かされなかった。
 中島氏は「当時、市民は何が逮捕につながるのか分からず、恐怖から自由な行動を自制した」と指摘。近年の政権についても「官僚、メディア、学者の支配が進む。近いうちに一般市民も『怖いからデモやSNSの政府批判をやめよう』という空気になりかねない」と、社会全体の萎縮を警戒した。

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