<ふくしまの10年・イチエフあの時 事故発生当初編>(10)忘れられたプール対応

2020年10月3日 08時00分

4号機の使用済み核燃料プールに、長いアームで注水するコンクリート圧送車=東京電力提供

 地上約三十メートルの建屋上部にあるプール。まだ熱を発し続ける多数の使用済み核燃料があり、冷却が途切れて水温は上昇。湯気が上がり始めていた。特に東京電力福島第一原発(イチエフ)4号機には、定期点検で取り出して間もない熱い五百四十八体を含め千五百三十五体の使用済み核燃料があった。
 暴走する原子炉への対応に追われ、プールのリスクは忘れられがちだった。東電のテレビ会議を見ても、何度も話題には上りながら、原子炉の急報が入ってプールのことは後回しになっていた。
 実質的な対応が始まったのは、事故発生五日後の三月十六日だった。自衛隊ヘリが海水を投下し、高圧放水車が地上から放水した。しかし、当時の吉田昌郎(まさお)所長(故人)は「セミの小便みたい」と評した。水量が少なすぎた。
 危機を救ったのは、折り畳み式の長いアームをもつコンクリート圧送車。筒先をプール直上に向け連続注水が可能となった。「これはいい」と吉田所長は喜び、次々と圧送車が投入されていった。
 この方式を提案し、導入に奔走したのは、ドイツの圧送車製造会社の日本法人社長だった出口秀夫さん。「原子炉の注水にはもっとすごい装備が出てくると思っていたよ。でもヘリや放水車とか。こりゃだめだと。あきらめず提案し続けてよかった」
 ◆次回は6日掲載予定。ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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