歓喜の歌「第九」は年末に響くのか コロナ禍で日フィルが公演模索

2020年10月4日 05時55分
 年末恒例のベートーベンの交響曲第九番(第九)演奏会。年間の第九の公演回数が世界一とされる日本フィルハーモニー交響楽団(日フィル)はコロナ禍の中、公演を目指している。政府によるイベント開催制限の緩和で、クラシック演奏会を満席で開催できることになったが、問題は演奏側の「密」だ。例年の第九は合唱団を含めて300人近くが舞台に上る。今年も「歓喜の歌」声は響くのか。 (太田理英子)

昨年12月末、約200人の合唱団が参加した日本フィルハーモニー交響楽団の第9公演=東京都豊島区で(©山口敦)

◆70公演中止で赤字5億円 収入は「第九」頼り

 「夏の公演は中止が続いただけに、是が非でも第九はやりたい」。日フィルの担当者はそう語る。演奏にかける思いだけでなく、夏と年末の第九の公演が、収入の大半を占めるという事情もある。
 2月末から8月にかけての計70公演が中止となり、赤字は約5億円に上った。奏者を減らしたり、アクリル板の仕切りを置いたり、映像配信だけの無観客にしたり。新型コロナウイルス感染対策をして開催できるようになったのは6月以降で、23公演だけだ。
 クラシック音楽公演運営推進協議会(東京)などが演奏者と客席の実証実験を行い、「従来の奏者の間隔でも感染リスクが高まるというデータは得られなかった」と8月に発表した。しかし、楽屋の「密」は解消できず、日フィルは現在も、奏者約60人で演奏会を開くことが多い。通常よりも20人近く少ないため、演奏できる楽曲は限られ、従来と同じ演奏会を開けないでいる。
 そんな状況の中、年末が近づいてきた。今年はベートーベン生誕から250年。日フィルは12月に7回の第九の主催公演を計画しているが、まだ開催を決断できない。

クラシック音楽公演運営推進協議会による合唱時の飛沫を測る実験で、透明のマウスガードを付けて歌う歌手(©2020 Kunihisa Tsukada)

◆リスク高ければ公演厳しく 合唱団の規模縮小も

 開催可否の鍵を握るのが、合唱時の感染リスクを調べる実証実験の結果だ。同推進協議会が9月末、長野県内の研究施設で、透明のマウスガードなどを着けたりして、合唱時の飛沫の飛び方などを測った。日本語のほか、第九でも使うドイツ語の歌唱でも実験し、10月下旬には結果が出る。
 想定を超える感染リスクが示された場合は、公演の開催も厳しくなる。合唱団の規模縮小も覚悟しているが、日フィルの奏者たちは吉報を待っている。
 日本オーケストラ連盟によると、年末の市民合唱団主催の第九演奏会のほとんどは中止に決まった。オーケストラの主催公演は判断を保留している楽団が目立ち、東京都交響楽団も「年に一度の第九を楽しみにするお客さんは多いが未定。10月末には判断したい」と話す。
 同連盟の桑原浩専務理事・事務局長は「第九は、クラシック音楽界としては新年を迎えるための元気の旗印。コロナ禍の今こそやりたいと考えている楽団は多いはず」と言葉に力を込めた。

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